[速報]ドイツ連邦憲法裁判所がドイツがUPC協定を批准するための法律を無効としました。

以前の記事「ドイツ連邦憲法裁判所が欧州単一特許制度に待ったをかけました」でも少し触れましたが、2017年6月にドイツが統一特許裁判所(UPC)の協定を批准するための法律(承認法)に対する憲法異議がドイツ連邦憲法裁判所に提起されました。

この憲法異議が係属していたためこれまでドイツはUPC協定を批准することができず、UPC協定の発効がブロックされていました(以前の記事「UPC協定のこれまで経緯のまとめ」をご参照下さい)。

この憲法異議に対する決定がなかなか出なかったので色々と憶測を呼んでいたのですが、ついに本日、ドイツ連邦憲法裁判所はプレスリリースで、憲法異議を認める決定、すなわち承認法は無効であるという決定を下したことを公表しました。

プレスリリースの冒頭の原文および日本語訳は以下の通りです。

英語原文:

The Act of Approval to the Agreement on a Unified Patent Court (“the Act of Approval”) to confer sovereign powers on the Unified Patent Court is void. In its outcome, it amends the Constitution in substantive terms, though it has not been approved by the Bundestag with the required two-thirds majority. This is what the Second Senate of the Federal Constitutional Court decided on a constitutional complaint in an order published today. In its reasoning, the Senate stated that, in order to safeguard their right to influence the process of European integration by democratic means, this, in principle, also entails the right of citizens that sovereign powers be conferred only in the ways provided for by the Basic Law. An act of approval to an international treaty that has been adopted in violation thereof cannot provide democratic legitimation for the exercise of public authority by the EU or any other international institution supplementary to or otherwise closely tied to the EU.

日本語訳:

「統一特許裁判所に主権を授与するための統一特許裁判所の協定(UPC協定)に対する承認法は無効である。承認法は結果として憲法の実質的な修正になるがそれに必要な3分の2の多数でドイツ連邦議会によって承認されていない。 ドイツ連邦憲法裁判所の第2上院は今日公表された憲法異議に対する判決でこのように決定した。第2上院はその理由として、民主的手段により欧州統合のプロセスに影響を与える可能性を確保するために民衆は原則として主権のドイツ基本法によって認められた方法のみによって移管される権利を有するとした。これに違反して採択された国際条約の承認行為は、EUまたはEUに補足的またはその他の形で密接に結びついた他の国際機関による公権力の行使を正当化できない。」

このドイツ連邦憲法裁判所の決定によりドイツは、少なくともドイツ連邦議会が承認法を3分の2の多数で再承認という手続きを経なければUPC協定に批准することができなくなりました。

現在のドイツは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて承認法どころの状況ではないと思うのでそもそもドイツ連邦議会で承認法が議論されるのは暫く後になりそうです。

また先日にイギリスがUPC協定に参加しないことを明言したことを鑑みれば、UPC協定の発効自体の雲行きが怪しくなってきました。

UPC協定の今後を引き続き見守りたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました