今後クレームにおける相対的表現はEPOで致命的になるかもしれません

「薄い」、「広い」、「強い」といった相対的表現がクレームで用られることがあります。このようなクレームにおける相対的表現はこれまで欧州特許庁ではあまり問題になることはありませんでした。

より具体的には2025年版ガイドラインによれば、このような相対的表現は以下のように先行技術に対する唯一の差異点である場合に不明確と指摘するものとされていました。

ただし、出願人がクレームの対象を先行技術から区別するための唯一の特徴として相対的表現または類似の表現を用いる場合、そのような表現が当該技術分野において一般に認識された意味を有していない限り、クレームにおけるその使用はEPC第84条に基づいて拒絶される。

またこのような相対的表現が先行技術に対する唯一の差異点でなくかつ明細書中にも明確な定義が存在しない場合は、2025年版ガイドラインは以下のように相対的表現がクレームに存在することを許容していました。

相対的表現に一般的に認められた意味がなく、かつ明細書全体の開示の文脈からもその意味が明確でない場合、審査部は、可能であれば、当初出願時の開示の他の箇所に見られるより正確な表現に置き換えるよう出願人に求める。開示中に明確な定義の根拠が存在せず、かつその表現がもはや唯一の差異的特徴ではない場合には、その表現をクレーム中に残すことができる。なぜなら、それを削除すると、通常は出願時の明細書の内容を超えて主題が拡張されることになり、EPC123条(2) に違反することになるからである

つまり2025年版ガイドラインによれば相対的表現はそもそも不明確と指摘されることが少なく、仮に明確性を指摘されたとしても容易にその指摘を解消することが可能でした。

しかし2026年4月1日から発効した2026年版ガイドラインでは、以下のように相対的表現が先行技術に対する唯一の差異点でなくとも明確性が指摘されるようになりました。

ただし、出願人がクレームの対象を先行技術から区別するための唯一の特徴として相対的表現または類似の表現を用いる場合、そのような表現が当該技術分野において一般に認識された意味を有していない限り、クレームにおけるその使用はEPC第84条に基づいて拒絶される。

さらに2026年版ガイドラインでは2025年版ガイドラインにおいて相対的表現のクレームにおける存在を許容していた箇所が以下のように削除されたため、相対的表現に一般的な意味がある場合を除いて、相対的表現がクレームに存在することが許容されなくなりました。

相対的表現に一般的に認められた意味がなく、かつ明細書全体の開示の文脈からもその意味が明確でない場合、審査部は、可能であれば、当初出願時の開示の他の箇所に見られるより正確な表現に置き換えるよう出願人に求める。開示中に明確な定義の根拠が存在せず、かつその表現がもはや唯一の差異的特徴ではない場合には、その表現をクレーム中に残すことができる。なぜなら、それを削除すると、通常は出願時の明細書の内容を超えて主題が拡張されることになり、欧州特許条約第123条(2) に違反することになるからである。

つまり2026年版ガイドラインによれば相対的表現は不明確と指摘され易くなり、かつその指摘を解消することもより困難になりました。

このため欧州向けの出願ではクレームにおける相対的表現を極力避けることをお勧めします。

参考資料:
https://www.epo.org/en/legal/guidelines-epc/2026/f_iv_4_6.html

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