ソフトウェア関連発明がEPOで越えなければならない2つのハードル

欧州特許庁でソフトウェア関連発明の特許性を認めてもらうには他の分野の発明と比較して追加で以下の2つのハードルを乗り越えなければなりません。

1.第1のハードル

EPC52条(2)は、数学的方法や精神的活動、法則、情報の提示などそれ自体は発明には該当せず保護対象でないことを規定しています。

このためソフトウェア関連発明まずEPC52条(2)で定められる保護対象の要件というハードルをまず乗り越えなければなりません。

しかしこの第1のハードルはそれほど高くありません。

EPC52条(2)はあくまで「それ自体」が発明ではないとしているので、クレーム中に例えばコンピュータ、ディスプレイ、センサなどの他の技術的手段がある場合は、全体として技術的性格を有する発明と判断され、保護対象として認められます。

例:
保護対象×保護対象○
データ曲線をクラスタリングする方法であって、数学的ステップa)、b)、およびc)を有し、前記データ曲線はDNA融解曲線である方法。データ曲線をクラスタリングするコンピュータで実行される方法であって、数学的ステップa)、b)、およびc)を有し、前記データ曲線はDNA融解曲線である方法。

備考:
本方法にはなんら技術的手段が含まれていないので全体として技術的性格を有しておらず第1のハードルをクリアしません。

備考:
本方法ではコンピュータで実行されるという技術的手段が含まれいるため全体として技術的性格を有しており、第1のハードルをクリアします。

2.第2のハードル

ソフトウェア関連発明が直面する第2のハードルは進歩性の判断時に現れます。

欧州特許庁での進歩性はProblem Solution Approachに基づいて厳密に評価されるのですが(Problem Solution Approachって何?という方は過去の記事「Problem Solution Approachの3つのステップ」をご参照下さい)、このProblem Solution Approachでは主文献(Closest Prior Art)に対する差異的特徴が非技術的な場合は、当業者にとって容易か非容易かを判断されることなくその時点で進歩性が無いと判断されます。

ここで技術的特徴とは「技術的目的に寄与する技術的効果を生み出す特徴 features producing a technical effect serving a technical purpose」と定義されています(ガイドラインG-VII, 5.4.)。

第1のハードルはクレームの中に一つでも技術的手段があればクリアできる低いハードルでしたが、この進歩性における技術性ハードルはClosest Prior Artとの対比によって決定する差異的特徴そのものに技術性が求められるため高めのハードルとなります。

例(T0784/06):
クレーム1(本願発明)主文献(Closest Prior Art)
生物サンプルから得られる遺伝子物質内の座における遺伝子型を決定する方法であって、
A.前記座における物質を反応させて前記座における所定の対立遺伝子の存在示す第1反応値を生成するステップと、
B.前記第1反応値を含むデータを形成するステップと、
C.確率分布の分布組を確立し、少なくとも1つの分布を含み、仮定反応値を前記座における対象の各々の遺伝子型に対する対応確率に組み合わせるステップと、
D.前記第1反応値を各適切な確率分布に適用して前記座における対象の各遺子型の条件付き確率の測定を決定ステップと、
E.前記(D)ステップから得たデータに基づいて遺伝子型を決定するステップと、
を有する方法。
生物サンプルから得られる遺伝子物質内の座における遺伝子型を決定する方法であって、
A.前記座における物質を反応させて前記座における所定の対立遺伝子の存在示す第1反応値を生成するステップと、
B.前記第1反応値を含むデータを形成するステップと、
を有する方法。

本ケースではクレーム1のステップAは前記座における物質を反応させるという特徴を有するため技術的な特徴です。一方でクレーム1のステップB~Eは技術的効果を伴わない純粋な数学的方法であるため非技術的な特徴です。したがってステップB~Eに基づいて進歩性を主張することはできません。一方でクレーム1は非技術的な特徴であるステップC~Eを有するという点でしか主文献に記載の方法と異なりません。このためクレーム1の発明は進歩性を有しません。

まとめ

ソフトウェア関連発明に科される第1および第2のハードルと他の特許性の要件との関係をフローチャートにまとめると以下のようになります。

このようにソフトウェア関連発明は他分野の発明と比較して追加で2つのハードルを乗り越えなければないません。特に第2のハードルは日本には無い考えに基づくので、苦労されている方はは多いと思います。どんな特徴が技術的と判断されるか、特徴が非技術的と認定されることを防ぐにはどうしたら良いかについてはまた別の機会に解説したいと思います。

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