ChatGPTは図面を正しく認識できるか?

昨日開催された高橋正治先生主催の知財実務情報Lab.におけるセミナー「ChatGPTを使って中間対応案を検討する」で「ChatGPTは引用文献の図面を正しく認識できるか?」というご質問を頂戴しました。

引用文献における図面のみに開示された特徴が新規性の議論において重要になる場合もあるので、ChatGPTが引用文献の図面を正しく認識できない場合、ChatGPTを使ったOA対応案の妥当性はかなり限定されていまします。

そこで実際の欧州特許出願を用いてChatGPTが引用文献の図面を正しく認識できるかを検証してみました。

検証に用いた欧州特許出願

書誌的事項

– 公開番号:EP3398838
– 出願人:トヨタ自動車株式会社
– 欧州代理人:Cabinet Beau de Loménie
– 発明の名称:車両下部構造

クレーム1

車両のフロアパネル(12)の車幅方向両外側に、車両前後方向に延びるようにそれぞれ設けられた一対のロッカ(14,16)を含む車両下部構造であって、各ロッカは、以下を含むように構成されていることを特徴とする車両下部構造:
 車幅方向外側に配置される外側部(22)、
 外側部(22)と一体的に形成され、車両幅方向内側に配置され、外側部(22)とともに閉断面を形成する内側部(24)、および
 前記外側部(22)及び前記内側部(24)と一体的に形成され、前記閉断面部内において前記外側部(22)と前記内側部(24)との間に車幅方向に亘る第1衝撃吸収部(38,40)。

EESRの内容

クレーム1の主題は、D1(US 2013/0088044 A1)の特にFig. 15およびFig. 16に開示されているので新規性を有さない。

D1のFig. 15およびFig. 16:

出願人によるEESRに対する反論

D1のFig. 15およびFig. 16における衝撃吸収部1519は外側部及び内側部とは別部材である。したがってD1のFig. 15およびFig. 16は衝撃吸収部が外側部及び内側部と一体的に形成されることは開示していない。

ChatGPTとの対話の全容

ChatGPTとの対話の全容は以下のURLをご参照ください。

ChatGPT - 新規性評価依頼
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考察

ChatGPTが作成したクレームチャートからもわかるようにChatGPTは図面も開示箇所として適切に引用しています。したがってChatGPTは図面も認識しているようです。

さらにChatGPTが図面を正しく認識しているかを確認するために「挿入部(insert 1519)が閉じた断面構造内で外部セクションと内部セクションとの間を車両幅方向にわたって跨ぐことはD1に開示されていますか?」という質問をしてみました。当該質問に対するChatGPTの回答は以下の通りです。

確かにD1の図15には以下のように挿入部(insert 1519)が外側壁(1523)と内側壁(1527)の間に配置されていることが視覚的に示されています。

結論

上述のようにChatGPTはクレームチャートにおいて適切な図面を引用し、かつ個別の質問でも図面に開示された内容を正しく認識しています。

このことからChatGPTは図面を正しく認識することが可能であると言えます。

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