どの生成AIが明細書作成に優れているか?

どのテキスト生成AIが特許出願書面の作成に優れているかを調査するため代表的なテキスト生成AIであるChatGPT o3、Claude 3.7、Cemini 2.5proに特許請求の範囲および明細書を作成してもらいました。

発明の題材としては2011年の欧州特許弁理士試験(EQE)のPart Aの化学問題を用いました。

欧州特許弁理士試験(EQE)のPart Aでは発明提案書と先行技術文献に基づいて特許請求の範囲および明細書を作成することが求められます。

そこでそれぞれの生成AIに以下のに2011年の欧州特許弁理士試験(EQE)のPart Aの化学問題の資料をアップロードし、

そして以下のプロンプトによって特許請求の範囲および明細書を作成してもらいました。

You are a European patent attorney. Based on the attached invention report and the prior art documents D1 and D2, please draft a patent application description and a set of claims. When drafting the claims, please ensure that the invention is protected from multiple angles.
和訳
あなたは欧州特許理士です。添付の発明提案書(Invention report)と、先行技術文献D1およびD2に基づいて特許出願用明細書および特許請求の範囲を作成してください。特許請求の範囲の作成の際には発明の多面的な保護を意識してください。

そして得られた特許請求の範囲および明細書を以下の公式解答に基づき採点しました。

得られた特許請求の範囲および明細書そしてその採点は以下の通りです。

ChatGPT o3

特許請求の範囲および明細書

・採点

採点項目 配点 得点 コメント
ポリマー請求項 30 13

−5 点(不要な吸水性能・保持性能パラメータ)
−12 点(CMCNa:HEC を2.0-3.2とし3.1-3.2を含めたため発明の選択発明性が弱まる)

ポリマー製造方法 10 0 −2 点(脱イオン水洗浄を必須にして不要に限定)
−2 点(相転移乾燥を必須にして不要に限定)
−6 点(CMCNa:HEC 2.0-3.2で D1 と部分的に重複し新規性が欠ける)
吸収体製品請求項 25 10 −10 点(CMCNa:HEC 比がポリマー請求項と同じで0.5-5.0 に拡げていない)
−5 点(架橋度 2-10 % を欠落)
製品製造方法請求項 5 0 −5 点
従属請求項 15 11 +2 点(pH 3.5-4.5)
+2 点(カルボジイミド 5-10 wt%)+2 点(相転移乾燥/アセトン)
+5 点(セルロース系繊維:綿・フラックス・レーヨン)
明細書 15 11 −1 点(比率 2.0-3.2 が請求項と対応していない)
先行技術の考察(5/5)、進歩性の根拠(5/5)、明細書の完全性(2/5)
R.43(2) EPC 重複独立項ペナルティ −5 −5 点
合計 100 40 / 100  

Claude 3.7

特許請求の範囲および明細書

・採点

採点項目 配点 得点 コメント
ポリマー請求項 30 3

「consisting of」ではなく「comprising」使用、product by process形式(-10)、架橋度2-10%記載なし(-5)、CMCNa/HEC重量比2.0-3.0記載なし(-12)

ポリマー製造方法 10 4 必須濃度範囲の記載不足、重量比2.0-3.0の限定がない(-6)
吸収体製品請求項 25 15  基本構造は正しいが、CMCNa/HEC重量比が不適切(0.5-5.0ではなく2.0-3.0に制限)(-10)
製品製造方法請求項 5 5 適切に記載されている
従属請求項 15 15 適切に記載されている
明細書 15 13 先行技術の考察(5/5)、進歩性の根拠(5/5)、明細書の完全性(3/5)
合計 100 55 / 100  

Cemini 2.5pro

特許請求の範囲および明細書

・採点

採点項目 配点 得点 コメント
ポリマー請求項 30 3

– 必須の重量比(CMCNa/HEC 2.0-3.0)の限定がなかい(-12) 。
– 「カルボジイミドで架橋された」という表現がプロダクト・バイ・プロセスと見なされ減点 (-10) 。
– 不要なパラメータ(吸収能、保水性、せん断弾性率)を記載したため減点 (-5) 。

ポリマー製造方法 10 0 D1の実施例に対し新規性を有するための必須の重量比(CMCNa/HEC 2.0-3.0)の限定がなかったため、新規性なしとして0点 。
吸収体製品請求項 25 10 – 必須のポリマーの重量比(CMCNa/HEC 0.5-5.0)の限定が独立請求項になかったため減点 (-5) 。
– ポリマーの特定(「カルボジイミドで架橋された」)がプロダクト・バイ・プロセスと見なされる可能性で減点 (-10) 。
製品製造方法請求項 5 5 – この独立請求項を作成していなかったため0点 。
従属請求項 15 ポリマーの最も効果的な重量比(2.4-3.0、4点相当)や、吸収物品における特定のポリマー重量比(2.0-3.0、2点相当)の請求項がなかったため満点に至らず 。
明細書 15 10

– 先行技術の議論 (推定4/5点) 。
– 進歩性の根拠の強調 (推定4/5点) 。
– 独立請求項が最適ではなかったため、請求項との整合性で減点 (推定2/5点) 。

合計 100 32/ 100  

まとめ

評価した生成AIの解答うちClaudeの解答はおそらくPart Aを合格できるレベルにあると思います。したがって現時点ではClaudeが最も特許出願書面作成に適した生成AIと言えるかと思います。

一方で生成AIの独立クレーム作成能力はまだ改善の余地がありそうです(欧州特許庁の公式解答の妥当性については議論の余地はありますが。。。)。

このためまずは人間が発明提案書やヒアリングに基づき独立クレームを作成し、そのあとは生成AIに従属クレームの作成や明細書作成をサポートしてもらうという人間と機械との協同であれば高品質な特許出願書面を効率的に作成できるかもしれません。

 

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