欧州特許の年金はいつから各国支払になるか?

欧州特許に関する年金(Renewal fee、更新手数料)は欧州特許出願が欧州特許庁に係属中は欧州特許庁に支払い、欧州特許が登録になり各国での有効化(Validation)手続きが完了した後は欧州特許庁ではなく権利が有効化された各国での支払いになることは良く知られています(EPC86条)。

しかし、具体的にどのタイミングで年金の支払が欧州特許庁から各国に切り替わるかは正確にはあまり知られていません。

そこで具体的にどのタイミングで年金の支払が欧州特許庁から各国に切り替わるのかを説明します。

まず維持年金の支払が欧州特許庁から各国に切り替わるタイミングを規定しているのが以下のEPC86条(2)になります。

EPC86条(2)
更新手数料の納付義務は,欧州特許の付与の告示が欧州特許公報に公告された年について納付す べき更新手数料の納付をもって消滅する。

つまり年金の支払が欧州特許庁から各国への切替は欧州特許公報に公告された日、すなわち欧州特許公報の公開日を基準に判断されます。

以下に具体例を用いて年金の支払が欧州特許庁から各国へ切り替わるタイミングを説明します。

ケース1:4年度の年金を欧州特許庁に支払う場合

2017年1月21日:欧州特許出願
2019年1月22日:3年度スタート
2019年1月31日:3年度年金納付期限 納付先=欧州特許庁
2020年1月22日:4年度スタート
2020年1月24日:欧州特許公報が公開
2020年1月31日:4年度年金納付期限 納付先=欧州特許庁
2021年1月22日:5年度スタート
2021年1月31日:5年度年金納付期限 納付先=各国

この場合、欧州特許公報の公開は4年度スタートの後の2020年1月24日です。このためEPC86条(2)により4年度(欧州特許公報が公開された年度)の年金は欧州特許庁に支払わなければなりません。

ケース2:4年度の年金を各国に支払う場合

2017年1月21日:欧州特許出願
2019年1月22日:3年度スタート
2019年1月31日:3年度年金納付期限 納付先=欧州特許庁
2020年1月20日:欧州特許公報が公開
2020年1月22日:4年度スタート
2020年1月31日:4年度年金納付期限 納付先=各国

この場合、欧州特許公報が公開されたのは4年度スタートの前の2020年1月20日です。つまり欧州特許公報が公開されたのは3年度になります。このため欧州特許庁への年金納付の義務は3年度の年金納付によって消滅し、4年度の年金は欧州特許庁ではなく各国に支払うことになります。

まとめ

このように年金の支払が欧州特許庁から各国へ切り替わるのはどの年度に欧州特許公報が公告されたかによって決まります。特許査定の発行日やValidation期間などは年金の支払の切替には関係がありません。

ちなみに欧州特許公報は特許査定の発行から3~4週間後に公開されます。

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