欧州単一特許制度についてよくあるQ&A

  1. I. 欧州単一効力特許について
      1. Q. 欧州単一効特許(unitary patent)とはなんですか?
      2. Q. これまでの欧州特許と何が違うのですか?
      3. Q. これまでの欧州特許とは取得手続きが異なりますか?
      4. Q. 単一効申請に庁費用はかかりますか?
      5. Q. 単一効申請を取り下げることはできますか?
      6. Q. 欧州単一効特許を取得するには単一効申請だけで十分ですか?
      7. Q. 欧州特許の全文翻訳の提出の期限はいつまでですが?
      8. Q. 欧州特許の全文翻訳は権利範囲の解釈に影響を及ぼしますか?
      9. Q. 欧州特許の全文翻訳は機械翻訳でもOKですか?
      10. Q. 欧州単一効特許がカバーする国はどこですか?
      11. Q. UPC協定発効直後の欧州単一効特許がカバーする国は具体的にどこですか?
      12. Q. 欧州単一効特許がカバーする国は欧州単一効特許が登録された後にUPC協定に批准した国にも拡大されますか?
      13. Q. 欧州単一効特許がカバーする国はEPOのRegisterで確認できますか?
      14. Q. 欧州単一効特許を選択した場合であっても平行して従来のように欧州特許を有効化することができますか?
      15. Q. 欧州単一効特許について実施権を許諾する際、実施の範囲を一部の参加加盟国に限定することは可能ですか?
      16. Q. 欧州単一効特許を従来の欧州特許に変更することはできますか?
      17. Q. 既に付与された従来の欧州特許を欧州単一効特許に変更することはできますか?
      18. Q. 欧州単一効特許と国内特許とが両立することはできますか?
      19. Q. 同じ基礎出願に基づく欧州単一効特許とドイツ国内特許が両立できるとことですが、2つの権利の関係はどうなるのでしょうか?
      20. Q. 親出願が欧州単一効特許となると子出願も欧州単一効特許にしなければなりませんか?
      21. Q. 欧州単一効特許の譲渡契約にはどこの国の法律が適用されますか?
      22. Q. 欧州単一効特許の維持費用はどれぐらいですか?
      23. Q. 欧州単一効特許の維持費用の減額はありますか?
      24. Q. どんな欧州特許が欧州単一効特許に向いていますか?
  2. II. 統一特許裁判所について
      1. Q. 統一特許裁判所(Unified Patent Court, UPC)とはなんですか?
      2. Q. 既存の従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟も統一特許裁判所が管轄するのですか?
      3. Q. ロンドンの中央部はどうなりましたか?
      4. Q. UPC協定はいつ発効しますか?
  3. III. Opt Outについて
      1. Q. Opt Outって何ですか?
      2. Q. 欧州単一効特許についてもOpt Outはできますか?
      3. Q. 既存の欧州特許についてOpt Outをしなかった場合はその欧州特許は欧州単一特許になるということですか?
      4. Q. Opt Outに庁費用はかかりますか?
      5. Q. Opt Outを業者または代理人に依頼した場合の費用はどれぐらいですか?
      6. Q. Opt Outした後にやっぱり専属管轄をUPCに戻すことはできますか?
      7. Q. 共願の場合、Opt Outは出願人全員で共同で行わなければならないですか?
      8. Q. Opt Outの効果は経過期間終了後も持続しますか?
      9. Q. Opt Outはいつから申請できますか?
      10. Q. Sunrise periodを過ぎるとOPT OUTは出来ないと言うことですか?
      11. Q. Opt Outの申請には代理人が必要ですか?
      12. Q. Opt Outはどうやって申請しますか?
      13. Q. CMSへのログインには電子ID証明が必要ですか?
      14. Q. 権限の無い第三者でもOpt Outができてしまうって本当ですか?
      15. Q. Opt Outされた欧州特許は公開されますか?申請者は把握できるのでしょうか?
      16. Q. どんな欧州特許についてOpt Outを申請すべきですか?

I. 欧州単一効力特許について

Q. 欧州単一効特許(unitary patent)とはなんですか?

A. 一言でいうとスペイン、クロアチア、ポーランドを除く欧州連合(EU)内で一括で効力を有する特許です。

Q. これまでの欧州特許と何が違うのですか?

A. これまでの欧州特許は各EPC加盟国の特許の束でした。つまり侵害訴訟または取消手続はその欧州特許が移行した(有効化された)各EPC加盟国で個別に提起しなければなりませんでした。一方で欧州単一効特許は全参加国において一括して有効な特許です。欧州単一効特許に関する侵害訴訟および取消手続は統一特許裁判所で提起することができ、これまで欧州特許のような各国での個別提起は必要ありません。

Q. これまでの欧州特許とは取得手続きが異なりますか?

A. 出願から特許査定までの手続きはこれまでの欧州特許と同様に欧州特許庁が管轄します。特許査定後、欧州特許公報の公開1ヶ月以内(延長不可)に単一効申請(Request for unitary effect)をすることにより欧州単一効特許を取得することができます。

ソース: https://www.epo.org/law-practice/unitary/unitary-patent/applying.html

Q. 単一効申請に庁費用はかかりますか?

A. いいえ。単一効申請に庁費用はかかりません。

ソース: https://www.epo.org/law-practice/unitary/unitary-patent.html

Q. 単一効申請を取り下げることはできますか?

A. はい。欧州単一効特許の登録がなされるまでは申請を取りさげることができます。

ソース:Unitary Patent Guide、段落65

Q. 欧州単一効特許を取得するには単一効申請だけで十分ですか?

A. いいえ。移行期間内(制度導入から6~12年)は以下の欧州特許の全文翻訳の提出が求められます。

・EPOでの手続き言語がフランス語、またはドイツ語の場合
  → 欧州特許全文の英訳

・EPOでの手続き言語が英語の場合
  → 欧州特許全文を1のEU公式言語への翻訳

ソース:Article 6(1) Regulation (EU) No 1260/2012

Q. 欧州特許の全文翻訳の提出の期限はいつまでですが?

A. 文翻訳は単一効申請の申請書に添付します。したがって単一効申請と同時に提出します。

ソース:Regulation (EU) No 1260/2012第6条(1)

Q. 欧州特許の全文翻訳は権利範囲の解釈に影響を及ぼしますか?

A. いいえ。欧州特許の全文翻訳に法的効力はありません。

ソース: Unitary Patent Guide、段落57

Q. 欧州特許の全文翻訳は機械翻訳でもOKですか?

A. REGULATION (EU) No 1260/2012の(12)は、「translations should not be carried out by automated means and their high quality should contribute to the training of translation engines by the EPO.」と機械翻訳の使用の禁止を明言しています。一方でおそらくEPOは全文翻訳をチェックすることはないので仮に機械翻訳を使用したとしても発覚することは無いかと思います。機械翻訳の使用は自己判断および自己責任でお願いいたします。

Q. 欧州単一効特許がカバーする国はどこですか?

A. 欧州単一効特許が登録される時点で既にUPC協定に批准している国のみをカバーします。 UPC協定参加国であっても欧州単一効特許が登録される時点でまだUPC協定に批准していない国はカバーされません。

ソース: Article 18(2) Regulation (EU) No 1257/2012

Q. UPC協定発効直後の欧州単一効特許がカバーする国は具体的にどこですか?

A. 以下の17ヶ国と言われています。

Austria, Belgium, Bulgaria, Denmark, Estonia, Finland, France, Germany, Italy, Latvia, Lithuania, Luxembourg, Malta, the Netherlands, Portugal, Slovenia, Sweden

ソース: https://www.epo.org/law-practice/unitary/unitary-patent.html

Q. 欧州単一効特許がカバーする国は欧州単一効特許が登録された後にUPC協定に批准した国にも拡大されますか?

A. いいえ。欧州単一効特許がカバーする国は登録後の批准国によって拡大されることはありません。

ソース: Article 18(2) Regulation (EU) No 1257/2012

Q. 欧州単一効特許がカバーする国はEPOのRegisterで確認できますか?

A. はい。確認可能です。

ソース: Rule 16(1)(g) UPR

Q. 欧州単一効特許を選択した場合であっても平行して従来のように欧州特許を有効化することができますか?

A. はい。欧州単一効特許がカバーしない国(登録時点でUPC協定に未批准の国+非EU加盟国+スペイン、ポーランド、クロアチア)については欧州単一効特許を選択した場合であっても平行して従来のように欧州特許を有効化することができます。一方で欧州単一効特許がカバーする国については平行して欧州特許を有効化することはできません。

ソース: Unitary Patent Guide、段落16~18

Q. 欧州単一効特許について実施権を許諾する際、実施の範囲を一部の参加加盟国に限定することは可能ですか?

A. はい。可能です。

ソース: Article 3(2) Regulation (EU) No 1257/2012

Q. 欧州単一効特許を従来の欧州特許に変更することはできますか?

A. いいえ。一度付与された欧州単一効特許を従来の欧州特許に変更することはできません。

Q. 既に付与された従来の欧州特許を欧州単一効特許に変更することはできますか?

A. いいえ。一度付与された従来の欧州特許を欧州単一効特許に変更することはできません。

Q. 欧州単一効特許と国内特許とが両立することはできますか?

A. 国によってはできます。例えば同じ基礎出願に基づく欧州単一効特許とドイツ国内特許とは両立できます。

Q. 同じ基礎出願に基づく欧州単一効特許とドイツ国内特許が両立できるとことですが、2つの権利の関係はどうなるのでしょうか?

A. 両特許は完全に独立した別の権利として取り扱われます。詳しくは「欧州特許とドイツ国内特許との間のダブルパテントの取扱い UPC協定発効後編」をご参照ください。

Q. 親出願が欧州単一効特許となると子出願も欧州単一効特許にしなければなりませんか?

A. いいえ。子出願は親出願から独立しています。このため親出願が欧州単一効特許となっても子出願は従来の欧州特許とすることができます。

Q. 欧州単一効特許の譲渡契約にはどこの国の法律が適用されますか?

A. 過去の記事「欧州単一効特許に基づくライセンス契約または譲渡契約にはどの国の法律が適用されるか?」をご参照ください。

Q. 欧州単一効特許の維持費用はどれぐらいですか?

A. ドイツ、フランス、イタリア、オランダの維持年金の合計額に相当します。

ソース:https://www.epo.org/law-practice/unitary/unitary-patent/cost.html

Q. 欧州単一効特許の維持費用の減額はありますか?

A. はい。ライセンスの付与を拒まないことを宣言しますと(ライセンスオブライト)、維持年金が15%減額されます。

ソース:Rule 12 UPR, Article 3 RFeesUPP

Q. どんな欧州特許が欧州単一効特許に向いていますか?

A. 移行国が多く、価値が比較的低い特許が向いているかと思います(過去の記事「どのような特許が欧州単一効特許に適しているか?」を参照ください)。

II. 統一特許裁判所について

Q. 統一特許裁判所(Unified Patent Court, UPC)とはなんですか?

A. 欧州単一効特許および従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟を管轄し、第一審裁判所と控訴裁判所とからなる裁判所です。第一審裁判所は主に取消訴訟を管轄する中央部(パリ、ミュンヘン)と、主に侵害訴訟を管轄する地方・地域部とからなります。

Q. 既存の従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟も統一特許裁判所が管轄するのですか?

A. はい。既存の従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟も統一特許裁判所が管轄します。一方で移行期間中(7~14年)は従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟は統一特許裁判所ではなく各国で個別に提起することもできます。

ソース:Article 83(1) UPCA

Q. ロンドンの中央部はどうなりましたか?

A. 少なくとも一時的にはパリまたはミュンヘンの中央部に吸収されることになります。その後どうなるかはまだ決定していません。将来的には別の都市にロンドンに設立されるはずであった中央部が設立する可能性もあります。現在候補となっている都市はミラノです。オランダのハーグも候補でしたがオランダ政府が断念しました。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/locations
https://www.managingip.com/article/2aelfa4rs81abg9wndb0g/exclusive-netherlands-drops-upc-central-division-bid

Q. UPC協定はいつ発効しますか?

A. 2012年時点で最も多くの欧州特許が効力を有する加盟国3ヶ国(ドイツ、フランス、イタリア)を含む13カ国がUPC協定に批准してから4月目の最初の日からです(Article 89(1) UPCA)。 現在はフランス、イタリアを含む16ヶ国が既に批准済です。したがって現在はドイツの批准(批准書の寄託)待ちです。

またUPC準備委員の会長のRamsay氏によるとドイツがUPC協定批准書を寄託するのは2022年末ごろになるとのことです。 これはUPC協定が2023年の春ごろに発効することを意味します。

III. Opt Outについて

Q. Opt Outって何ですか?

A. 従来の欧州特許についての統一特許裁判所の管轄の除外するための手続きです。 UPC協定の移行期間かつ統一特許裁判所に訴訟が既に提起されていない場合に申請することができます。統一特許裁判所での取消訴訟による従来の欧州特許のセントラルアタックを防ぐことができます。

ソース:Article 83(3) UPCA

Q. 欧州単一効特許についてもOpt Outはできますか?

A.  いいえ。欧州単一効特許については統一特許裁判所の専属管轄を除外することはできません。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/faq/opt-out

Q. 既存の欧州特許についてOpt Outをしなかった場合はその欧州特許は欧州単一特許になるということですか?

A. いいえ。Opt Outは単に既存の欧州特許に関するUPCの管轄権を除外するものです。Opt Outしなかったからといって既存の欧州特許が欧州単一効特許に変更されるわけではありません。

Q. Opt Outに庁費用はかかりますか?

A. いいえ。Opt Outの庁費用は無料です。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/news/upc-court-fees-and-recoverable-costs

Q. Opt Outを業者または代理人に依頼した場合の費用はどれぐらいですか?

A. 依頼するOpt Out申請のボリューム、依頼内容のチェックの要否によって変動しますが私が調べた範囲では10€~200€/1欧州特許が相場のようです。

Q. Opt Outした後にやっぱり専属管轄をUPCに戻すことはできますか?

A. はい。取消手続または侵害訴訟が国内裁判所に提起されていないかぎりOpt Outを取り下げることで管轄を統一特許裁判所に戻すことができます。ただしこの場合再度Opt Outを申請することはできません。

ソース:Article 83(4) UPCA、Rule 5 Paragraph 10 UPC Rules of Procedure

Q. 共願の場合、Opt Outは出願人全員で共同で行わなければならないですか?

A. はい。共願の場合、Opt Outは出願人全員で共同で行わなければなりません。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/faq/opt-out

Q. Opt Outの効果は経過期間終了後も持続しますか?

A. はい。 Opt Outの効果はOpt Outが取り下げられない限り経過期間終了後も持続します。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/faq/opt-out

Q. Opt Outはいつから申請できますか?

A. Sunrise periodと呼ばれるUPC協定発効3月前の期間からOpt Outを申請することができます。

ソース:https://www.epo.org/law-practice/unitary/upc/upc-faq.html

Q. Sunrise periodを過ぎるとOPT OUTは出来ないと言うことですか?

A. いいえ。サンライズ期間はあくまでOpt Out申請の受理が開始される期間です。サンライズ期間の修了後であってもUPCに訴訟が提起されていない限りOpt Out申請は可能です。

ソース:UPC協定83条(3)

Q. Opt Outの申請には代理人が必要ですか?

A. いいえ。Opt Outの申請は特許権者、出願人自身でもでき、代理人は必要ありません(Article 83(4) UPCA)。また委任状があれば無資格者であってもOpt Outの申請を代理することができます(Rule 5(3)UPC Rules of Procedure )。

Q. Opt Outはどうやって申請しますか?

A. UPCのCase Management System (CMS)とよばれるプラットフォームから申請することができます。

Q. CMSへのログインには電子ID証明が必要ですか?

A. はい。詳しくは過去の記事「UPCでのOpt Out申請に電子IDが必要になります」をご参照ください。

Q. 権限の無い第三者でもOpt Outができてしまうって本当ですか?

A. はい。本当です。詳しくは過去の記事「UPCでのOpt Out申請は権限の無い第三者でもできてしまいます」をご参照ください。

Q. Opt Outされた欧州特許は公開されますか?申請者は把握できるのでしょうか?

A. はい。UPCのウェブサイトで公開されます。

ソース:https://www.epo.org/law-practice/unitary/upc/upc-faq.html

Q. どんな欧州特許についてOpt Outを申請すべきですか?

A. 移行国(有効化した国)が多く、取消訴訟が提起されるリスクの高い欧州特許についてはセントラルアタックの弊害が大きいのでOpt Outを申請した方が好ましいです。

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