1.背景:
日々の実務から出願書面のボリュームが大きいほど、欧州特許庁での審査が長期化しているように思えたので、出願書面のページ数と欧州特許庁における係属期間との関連について調べてみました。
2.調査対象:
2016年8月に特許査定が公開された日本企業の特許のうち:
・出願番号が若い特許(以下「早い特許」とも称する)100件(係属期間:2年未満)
・出願番号が古い特許(以下「遅い特許」とも称する)100件(係属期間:10年以上)
3.結果:
E:早い特許
S:遅い特許
(1)出願書面全体
早い特許平均:46.8ページ
遅い特許平均:65.7ページ
(2)明細書
早い特許平均:32.4ページ
遅い特許平均:48.4ページ
(3)クレーム
早い特許平均:3.2ページ
遅い特許平均:6.7ページ
(4)図面
早い特許平均:11.2ページ
遅い特許平均:10.3ページ
(5)まとめ
・出願書面全体のページ数は遅い特許で多く、早い特許で少ない。
・明細書のページ数も遅い特許で多く、早い特許で少ない。
・クレームのページ数も遅い特許で多く、早い特許で少ない。差は特に顕著。
・一方、図面のページ数に差はない。
4.考察:
特にクレームのページ数の差が大きかったことから、クレームの記載量が多いことがEPOでの係属期間の長期化(=出願維持年金の高額化)につながる可能性がある。
一方で図面のページ数に差はなかった。これは早い特許では出願書面全体における図面のページ数の割合が高いことを意味する。このため、早い特許では、多くの図面を用いて発明を表現したことで、審査官の理解を促し、審査期間の短縮に繋がったとも考えられる。
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