EPOルートは何ヶ国からがお得か?

欧州での権利取得ルートには欧州特許庁ルート(EPOルート)と各国ルートとが存在します。通説としては欧州の3ヶ国以上で権利を取得したい場合は各国ルートよりもEPOルートの方が安く、権利を取得したい欧州の国がそれ以下である場合は各国ルートのほうが安いといわれています。

そこでモデルケースを用いて出願から登録までにかかる総額費用を比較しながらこの通説が正しいかを検証してみました。

モデルケースの定義:

基礎出願を作成した日本の特許事務所を通してパリルートでのEPOルートまたは各国ルートで出願したと仮定します。英文明細書の作成費用は考慮していません。詳細な条件は以下の通りです。

 ・対象ルート: EPOルート、ドイツルート、イギリスルート、フランスルート
 ・英文明細書ページ数: 35ページ (約8000ワード)
 ・クレーム数: 10

 ・出願から登録までの期間: 4年(5年目までの維持年金納付)
 ・登録までの実質的なOAの数: 2
 ・欧州代理人費用: 6500ユーロ(EPルート)、5000ユーロ(各国ルート)
 ・日本代理人費用: 50万円(EPルート)、40万円(各国ルート)
 ・英→独or仏翻訳費用: 25セント/1英語ワード

結果:

考察:

上記結果からわかるようにいずれの組合せであっても2ヶ国以上において権利を取得する場合は、各国ルートの総額費用がEPOルートの総額費用を上回ってしまいます。

唯一、日本の代理人を通さずかつドイツおよびイギリスの2ヶ国で権利を取得する場合にのみ、辛うじて(700ユーロ程度)各国ルートの総額費用がEPOルートの総額費用を下回るという結果になりました。しかし2ヶ国別々に出した場合に伴う社内での管理工程および作業工程の増加等を考えると、各国ルートのコストパフォーマンスは良いとは言えません。

結論:

欧州の2ヶ国以上で権利を取得したい場合は各国ルートよりもEPOルートの方がコスト面で有利。

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