EPOで保護対象となるソフトウェア関連発明の例

EPC52条(2)は、次のものそれ自体は「発明」でななく特許を受けることができないことを規定しています。

– 発見、科学理論及び数学的方法
– 美的創造物
– 精神的な行為,遊戯又は事業活動の遂行に関する計画,法則又は方法並びにコンピュータプログラム
– 情報の提示

このEPC52条(2)の規定によりソフトウェア関連発明は例えば数学的方法や情報の提示に該当するとして発明と認められないことがあります。

しかし以下のソフトウェア関連技術は欧州特許庁でも発明としてみなされ保護対象となります。

人工知能

人工知能や機械学習は、ニューラルネットワークのような数理的モデルやアルゴリズムに基づくためそれ自体をクレームした場合は、EPC52条(2)の数学的方法とみなされ保護対象となりません。

しかしクレームされた主題が全体として技術的性格を有する場合は発明とみなされ保護対象となります(ガイドラインG-II, 3.3.1)。

例えばクレームが技術的手段(例えばコンピュータ)の使用を伴う方法又は装置に向けられたものである場合、その主題は全体として技術的性格を有します(ガイドラインG-II, 3.3)。ただし「ニューラルネットワーク」などの用語は、単に抽象的なモデルやアルゴリズムを指すだけであり、それ自体が必ずしも技術的な手段の使用を意味するものではありません。

また、不規則な心拍を識別する目的で心臓モニタリング装置にニューラルネットワークを使用することは技術的に貢献します。一方で、例えばテキスト文書をテキストの内容のみに関連して分類することは、技術的な目的を有しません(T1358/09)。

シミュレーション、デザインまたはモデリング方法 

シミュレーション、デザインまたはモデリング方法は、通常少なくとも部分的にコンピュータで実行されるため主題が全体として技術的性格を有します。このためこれらの方法は発明であり保護対象となります(ガイドラインG-II, 3.3.2)。

コンピュータープログラム 

EPC52条(2)によれば「コンピュータプログラム」は発明ではないとして特許を受けることができません。しかしコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されたときに「さらなる技術的効果」を生じさせる場合は発明であるとして保護対象となります(ガイドラインG-II, 3.6)。

「さらなる技術的効果」は,プログラム(ソフトウェア)とそれが実行されるコンピュータ(ハードウェア)との間の「通常の」物理的相互作用を超える技術的効果を意味します。例えば、自動車のアンチロックブレーキシステムを制御する方法、ビデオを圧縮する方法、デジタル画像を復元する方法、または電子通信を暗号化する方法を特定したコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、さらなる技術的効果を生じさせます(ガイドライン G-II, 3.6.1)。

データフォーマット、データ構造 

媒体上に、または電磁的搬送波として具体化されたコンピュータで実行されるデータ構造またはデータフォーマットは、全体として技術的性格を有します。このためこれらは発明であり保護対象となります(ガイドラインG-II, 3.6.3)。

ユーザ・インターフェース 

ユーザ・インターフェース、特にグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)は、ユーザに情報を提示する機能と、ユーザからの入力を受理する機能とを有します。このうちユーザからの入力を受理する機能は、人間とコンピュータとの相互作用を前提とするので通常技術的性格を有します。このためユーザ・インターフェースは通常発明とみなされ保護対象となります(ガイドラインG-II, 3.7.1)。

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