ドイツで働き始めてから「日本弁理士がドイツでどんな仕事をしているんですか?」という質問をよく受けるようになりました。確かに欧州で資格もなく、英語が特別上手でない日本人がどんな仕事をしているのかは多くの人にとって謎であると思います。以下に私の業務について簡単にまとめてみました。
1.現在の仕事内容
(1)外内案件の中間処理
外内案件、すなわち欧州以外のクライアントの欧州またはドイツ出願の中間処理です。これが現在の私のメイン業務になります。私はまだ現地の資格を有していないので、ドイツ弁理士および欧州弁理士の指導の下に当該業務を遂行しています。顧客は様々で、日本のお客様だけでなくドイツやアメリカ、中国、インドなどのお客様も担当させてもらっています。
(2)内外案件の中間対応
内外案件、すなわち欧州のクライアントの欧州以外の特許出願の中間処理です。私の業務の中で2番目に多い業務となります。必然的といいますか、日本出願の中間処理を任されることが多いですが、日本以外にも、アメリカ、中国、インドの出願も担当させてもらってます。
(3)ドイツ出願書面の和訳
ドイツのお客様が日本に出願する場合に、和訳を指名されることがあります。またドイツ出願のウォッチングしている日本のお客様のためにドイツ語公開公報を和訳することもあります。
(4)日本語出願書面の独訳または英訳
あまり多くはありませんが、ドイツ出願を希望される日本のお客様から日本語出願書面の独訳を依頼されることがあります。また、同僚が日本語文献の訳文が必要な場合に、日本語文献を独訳または英訳することもあります。
(5)日本顧客対応
日本のお客様の窓口になったりしています。
(6)通訳
英語が得意でない日本のお客様との会議や会食のサポートをしたりもしています。
(7)ドイツ出願のドラフティング
上司の指導の下、ゼロからドイツ出願の明細書を作成することもあります。和独翻訳とは異なり、かなり時間を要してしまいます。日本語ができることと日本語明細書を書けることとが別物であると同様に、ドイツ語が出来ることとドイツ語の明細書作成を書けることとは別物であることを実感します。
(8)日本関係雑務
日本のホテルやセミナー会場の予約から日本の会社に入金の催促の電話までいろいろやります。正直、弁理士ではなくてもできる業務なので、当該雑務のために日本語ができる事務員を雇って欲しいと思う今日この頃です。
2.日本と変わった点
業務内容に関して言えば、日本で働いていたときは、明細書作成が主な業務でしたが、ドイツでは中間対応に重点がシフトしたという点で仕事内容が変化しました。また当然ながら通訳や翻訳業務も日本で働いていたときよりも増えました。
業務の質に関して言えば、日本では力強い諸先輩達の庇護の下で仕事をしていたので、自分自身に体外的な責任が求められる機会は少なかったのですが、分業と明確な責任の所在をよしとするドイツの中では自分の仕事にはモロに責任を追うことを求められます。責任を負うことは一方でストレスとなりますが、他方ではプロフェッショナルとしての良い刺激にもなります。
3.今後の展望
私はまだ欧州で代理ができる資格を有していないので、自らの名前で庁手続きをすることはできません。今後はいち早く欧州およびドイツの資格を取得し、自らの名前で仕事ができるようになりたいです。また特許だけでなく、欧州における商標および意匠の保護制度についても知識を深め、幅広いサービスを提供できるようになりたいです。
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