I. 背景
欧州特許庁は2016年以降、審査における生産性を劇的に向上させました(例えば「Boosting performance and quality」を参照)。
ここで気になるのが現在の欧州特許庁の生産性が他国の特許庁のそれと比較してどれぐらいかということです。
そこで欧州特許庁(EPO)の審査生産性をドイツ特許庁(GPTO)および日本特許庁(JPO)のそれと比較してみました。
II. 方法
1. 審査生産性の定義
本研究における審査生産性とは、2020年における審査官一人当たりの完了審査件数(特許査定数+拒絶査定数)の数と定義し、以下の式で算出しました。
完成審査件数 / 在籍する審査官の総数。
2. 利用可能なデータ(2020年)
2.1. 審査官の総数
欧州特許庁:4099人(1)
ドイツ特許庁: 約1000人 (2)
日本特許庁: 1883人 (3)
2.2. 完了審査件数
欧州特許庁: 140845 (4)
ドイツ特許庁:41723 (2)
日本特許庁: 220000 (3)
III. 結果
IV. 考察
日本国特許庁では先行技術調査が外注されていることを考慮しなければなりませんが、116.83という圧倒的な日本国特許庁の審査生産性は卓越しています。
欧州特許庁およびドイツ特許庁の審査官は共に先行技術調査を自ら行っているので、欧州特許庁およびドイツ特許庁の審査官の労働条件は同等であると思われます。それにもかかわらずドイツ特許庁の審査官の審査生産性(41.72)は欧州特許庁の審査官のそれ(34.36)よりも高いという結果になりました。
ドイツ特許庁の審査は時間がかかることで有名ですが、この数字は実はドイツ特許庁の審査官の方が欧州特許庁の審査官よりも生産的に働いていることを示しています。
V. 出典
(2) https://www.dpma.de/docs/dpma/veroeffentlichungen/jahresberichte/jahresbericht2020.pdf
(3) https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2021/index.html
(4) EP Bulletin Search のクエリコマンド「PSDP=2020*またはPCRF=2020*」
コメント