I. 背景
近年欧州特許庁で審査が促進され、かつ特許査定の発行数が増えてきたことを踏まえ、欧州特許庁における審査で一発許可の比率が上がったかどうかを調べてみました。
II. 方法
使用したツール:
EP Bulletin Search (データベース:BULL 2018/27)
一発許可の比率の指標の求め方:
一発許可(第1審査通知が許可予定通知)の比率の指標として審査請求と許可予定通知(EPC規則71条(3)の通知)とが同じ年になされたケースの比率を以下のように求めました。
審査請求と許可予定通知とが同じ年になされたケースの数/その年の全許可予定通知の数
審査請求と許可予定通知とが同じ年になされたケースでは、ほとんどの場合許可予定通知が審査過程における第1審査通知になります。ただしこの計算方法では許可予定通知が第1審査通知であっても審査請求が別の年になされたケースは考慮されません。
第2審査通知が許可予定通知の比率の指標の求め方:
第2審査通知が許可予定通知の比率の指標として第1審査通知と許可予定通知とが同じ年になされたケースの数の比率を以下のように求めました。
第1審査通知と許可予定通知とが同じ年になされたケースの数/その年の全許可予定通知の数
第1審査通知と許可予定通知とが同じ年になされたケースでは、ほとんどの場合許可予定通知が第2審査通知になります。ただしこの計算方法では許可予定通知が第2審査通知であっても第1審査通知が別の年に発行されたケースは考慮されません。
III. 結果:
IV. 考察:
左のグラフからは一発許可の比率は増えておらず、むしろ2013年と比較して減少していることが分かります。一方で右のグラフからは第2審査通知が許可予定通知であるケースは2015年から増えていることがわかります。これは欧州特許庁での審査が促進され、特許査定の発行数が急激に増えた年と重なります。
この結果は、最近の欧州特許庁の審査官は、第2審査通知で許可予定通知を出すことで審査を促進させていることが示唆されます。また個人的な感覚では第2審査通知以降も落としどころが不明なケースでは口頭審理に召喚されるケースが増えてきた気がします。
このため早期権利化の観点からは第2審査通知まで、すなわち第1審査通知に対する応答の時までに落としどころを決めておくことをお勧めします。また審査官が許可予定通知を出しやすいように第1審査通知に対する応答の際に明細書もクレームに併せて適合させておくことが好ましいです。
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