欧州特許庁で補正による導入が許可されうる「除くクレーム(いわゆるディスクレーマ)」は以下の3種類です。
1.それ自体が開示されたディスクレーマ(Disclaimer disclosed as such)
例:
補正前クレーム:金属粒子を含む混合物
明細書:「本発明の1の形態では混合物は銅粒子を除く金属粒子を含む」
↓
補正後クレーム:銅粒子を除く金属粒子を含む混合物。
備考:
当該ケースではディスクレーマ自体の開示が明細書にあるので補正による新規事項追加(EPC123条(2))の観点から問題になることはありません。
2.出願書面に開示された特徴を除くディスクレーマ(Disclosed disclaimer)
例:
補正前クレーム:金属粒子を含む混合物
明細書:「本発明の1の形態では金属粒子は銅粒子である」
↓
補正後クレーム:銅粒子を除く金属粒子を含む混合物。
備考:
「Disclosed disclaimer」が許されるのは、ディスクレーマ後の残りの部分を当初出願書面から直接的かつ一義的に導き出すことが可能な場合(directly and unambiguously derivable)です。より具体的には「Disclosed disclaimer」が許されるのは、ディスクレーマの導入により当初出願書面に開示されていない特定の主題の選抜(singling out)や中間一般化(intermediate generalisation)が生じない場合です(G2/10、ガイドライン H-V, 4.2)。
例えば下の図の左の例のようにクレームの範囲から特徴を点的に除く場合は通常当該要件を満たすと判断されますが、右の例のようにクレームの範囲から特徴を面的に除く場合であって、かつ残りの部分が当初出願書面に開示されていない場合は新規事項追加(EPC123条(2))の観点から許可されません。
3.出願書面に開示されていない特徴を除くディスクレーマ(Undisclosed disclaimer)
例:
補正前クレーム:金属粒子を含む混合物
明細書:「本発明の1の形態では、金属粒子は鉄粒子、銀粒子または金粒子である」(「銅粒子」に関する記載は無い)
↓
補正後クレーム:銅粒子を除く金属粒子を含む混合物。
備考:
「Undisclosed disclaimer」が許されるのは、以下の3つの場合のみです(G/1/03、G1/16、ガイドラインH-V, 4.1):
1.EPC54条(3)の先行技術(日本特許法29条の2の文献に対応)に対して新規性を確保する場合。
2.偶発的なEPC54条(2)の先行技術(日本特許法29条1項の文献に対応)に対し新規性を確保する場合。
3.非技術的理由により特許性を除外されている事項(例えば治療方法)を除く場合。
また「Undisclosed disclaimer」では、「Disclosed disclaimer」において要件であった残りの部分を当初出願書面から直接的かつ一義的に導き出すことが可能であることは求められません(G1/16)。
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