最近日本人技術スタッフの採用活動をしていると多くの方がまずは日本の弁理士資格を取得してから次のステップとして海外での就職を検討されているんだなと感じます。また最近大手企業を退職されて弁理士として独立された方も「弁理士資格をとって海外で働くという選択」という記事で海外で活躍するための前提として日本の弁理士資格の必要性を説明されています。
実際に私もそうですが日本での実務経験を積んだ後に海外で就職された方々には日本の弁理士資格を有している方が多いので、日本の弁理士資格取得→海外就職というのは成功率の高いキャリアパスであったことは確かだと思います。
しかし私の個人的な見解では少なくとも現在のドイツでは日本人が特許技術者として就職する上で日本の弁理士資格の必要性はそれほど高くないと思います。理由は以下の通りです。
1.日本の弁理士資格を活用する場面が無い
ドイツの事務所で働く日本人に一番求められるのは日本のクライアントの対応です。そして当然ながらドイツの事務所は日本のクライアントの欧州・ドイツでの手続きを代理します。したがって日本のクライアント対応に求められるのは欧州・ドイツの手続きに関する知識です。このため日本のクライアントの対応には日本の弁理士としての知識およびノウハウはあまり必要なく、むしろ欧州・ドイツの手続きに関する知識およびノウハウが求められます。
また、一昔前のようにドイツ企業が日本に沢山出願していた時代(全盛期の2002年には1万件以上!)は、ドイツ企業向けに日本の特許実務に関する情報およびそれを伝える日本の弁理士資格保持者の需要はあったと思います。しかしドイツ企業が日本への出願を減らした今日(2017年には4000件程度)ではそういった需要も少なくなってしまいました。
2.日本の弁理士資格によって就職がしやすくなるということが無い
3.日本の弁理士資格があってもあまり給与に反映されない
日本の弁理士資格があってもドイツではなんら代理権がないので、法的には普通の特許技術者と変わりません。また上述のようにドイツにおいて日本の弁理士資格の需要が減少したことにより、ドイツの事務所にとっても日本の弁理士資格にお金を出すインセンティブも減少しました。このためドイツの事務所が日本人技術者の給与を決定する際には現在では日本の弁理士資格はほとんど考慮されないと思います。
4.いずれにせよ一人前になるにはトレーニングが必要
日本の弁理士資格があっても無くても日本人が欧州・ドイツで特許技術者として一人前に業務がこなせるようになるには時間とトレーニングを要します。個人的な経験から日本の弁理士資格があるからといってこのトレーニングが楽になるということはありません。
5.日本の弁理士資格がなくとも活躍されている方がいる
さらに日本の弁理士資格を有せずとも日本のクライアントから高い評価を得ている欧州在住の日本人実務家の方々もいらっしゃいます。このことから日本のクライアントから評価されるためには日本の弁理士資格は必須でないと考えられます。
まとめ
海外で技術者として就職することを検討されている方は、上述の理由から日本の弁理士資格はマイナスにはならないけど大してプラスにもならないもの程度に考えておいた方が良いと思います。
一方で日本の弁理士試験は近年難化しているようなので、日本の弁理士資格取得にはそれなりの時間とエネルギーの投資が必要です。
ドイツで働くのもアリかなと思われた方は以下の記事もご参照下さい。
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