単一性の無い複数の発明を1つの出願にまとめると欧州ではコストが爆発します

稀にコスト削減を目的として明らかに単一性のない複数の発明を無理やり1つの出願にまとめ、出願後に分割をするという戦略を採用する出願人がいます。しかしこの戦略は欧州では逆にコストを大幅に増大させるのでお勧めできません。

この戦略が欧州でコストを大幅に増大させる要因は出願書面が35ページを超えた場合に発生するページ費用そして分割出願の必要性です。以下にモデルケースを用いて4つの単一性の無い複数の発明を1つの出願にまとめた場合と最初から4つの出願をした場合とを比較してなぜコストが大幅に増大するかを解説します。

最初から4つの出願をする場合

モデルケースとして1出願のページ数を35ページと仮定します。そうすると一連の出願にかかるページ費用は:

発明①:ページ費用(0 EUR)
発明②:ページ費用(0 EUR)
発明③:ページ費用(0 EUR)
発明④:ページ費用(0 EUR)

合計ページ費用:0 EUR

となります。

4つの発明を1つの出願にまとめた場合

モデルケースとして出願のページ数を35ページ×4発明=140ページとします。また本ケースでは4つの単一性の無い発明を1出願にまとめているので、親出願に加えて3つの分割出願(子出願)が必要になります。そうすると一連の出願にかかるページ費用は:

発明①(親出願):通常庁費用+ページ費用(115ページ×16 EUR/ページ=1840 EUR)
発明②(子出願):通常庁費用+ページ費用(1840 EUR)
発明③(子出願):通常庁費用+ページ費用(1840 EUR)
発明④(子出願):通常庁費用+ページ費用(1840 EUR)

合計ページ費用:7360 EUR

となります。

まとめ

このように単一性のない複数の発明を無理やり1つの出願にまとめる戦略では、出願書面のページ数がどうしても多くなってしまい、出願時そして分割出願時に余計なページ費用が発生します。これにより最終的なコストが大幅に跳ね上がります。上記例では最初から別出願にしておけばページ費用は一切発生しなかったにも関わらず当該戦略を採用したことで7360 EUR、日本円に換算すると100万円近くの余計な費用が発生することになります。

また分割出願を前提とするこの戦略では総額維持年金も高額化するリスクが高いです(過去の記事「EPOでは分割出願はお早目に」をご参照ください)。

したがってコストを意識するのであれば、欧州では無難に1発明・1出願の原則に従うことをお勧めします。

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