競合他社のパラメータ特許を攻撃するために先行技術文献調査をしてみたものの、先行技術文献に開示された発明には肝心のパラメータの明示的な開示が一切無いということが多々あります。
このような場合日本の異議などでは「先行技術文献の発明はパラメータを満たす蓋然性が高い」というような主張をすることが多いかと思います。
しかしながら欧州特許庁の異議では「先行技術文献の発明はパラメータを満たす蓋然性が高い」だけではパラメータの明示的な開示がない先行技術文献に基づいてパラメータ特許の新規性を否定することはできません。
欧州特許庁のガイドラインG-VI, 6には以下のように規定されています。
In the case of a prior-art document, the lack of novelty may be apparent from what is explicitly stated in the document itself. Alternatively, it may be implicit in the sense that, in carrying out the teaching of the prior-art document, the skilled person would inevitably arrive at a result falling within the terms of the claim.
つまり先行技術文献にパラメータが明示的(explicitly)に開示されていない場合であっても、パラメータが暗示的(implicitly)に開示されているということが認められれば、パラメータ特許の新規性を否定できます。しかしパラメータが暗示的(implicitly)に開示されているということが認められるには、必然的(inevitably)であることが求められます。
したがって、パラメータの明示的開示がない先行技術文献に基づいてパラメータ特許の新規性を否定するには「…といった理由で先行技術文献の発明はパラメータを満たす蓋然性が高い」という主張だけでは不十分で「…といった理由で先行技術文献の発明はクレーム1のパラメータを満たす」まで結論付けられることが求められます。
より具体的にはパラメータ特許の明細書における実施例の製法と、先行技術文献における製法とが同一のような場合に初めて、パラメータが暗示的に開示されていると認められ、パラメータの明示的な開示がない先行技術文献に基づいてパラメータ特許の新規性を否定できます。
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