邪王炎殺黒龍波とChatGPTとの類似性

40代のおじさんであれば誰もが知っている「邪王炎殺黒龍波」。

邪王炎殺黒龍波とは冨樫義博先生の代表作である「幽☆遊☆白書」というバトル漫画に登場する飛影というキャラクターが使う必殺技です。飛影というキャラクターのクールさ、黒龍波というネーミングのかっこ良さ、黒龍の圧倒的なビジュアルインパクト、技としての強力な破壊力そしてリスクといった男子にぶっ刺さる要素が絡まり合い当時の男子小中学生の心を鷲掴みにした技です。

小学生時代に右腕に忌呪帯法を巻き、荒くる黒龍を封印していたのは私だけでは無いと思います。

この少年時代の我々の心を鷲掴みにした邪王炎殺黒龍波と、ChatGPTのような近年目まぐるしい速度で進化する生成AIとは、一見して全く違う世界のものに見えますが実は両者には本質的な共通点があります。

以下に私が考える黒龍波と、ChatGPTとの共通点を紹介します。

1.もう後戻りはできない

飛影が2回目に黒龍波を発動させた武威戦では、飛影が右腕に宿った黒龍を封印する忌呪帯法を解きながら以下のセリフを残しています。

「もう後戻りはできんぞ、巻き方を忘れちまったからな」


出典:冨樫義博先生「幽☆遊☆白書」(集英社)

このように黒龍波は一度封印を解かれてしまうと、後戻りできないという性質があります。

同様に技術の進歩にも後戻りがありません。技術の進歩の象徴であるChatGPTが世に登場した以上は、ChatGPTが登場する以前の世界に戻ることはありません。このため我々には今後はChatGPTのようなAIと共に進化する以外の道が残されていません。今は機密情報漏洩リスクの観点から生成AIの使用を禁止している日本企業が多いと聞きますが、今後は生成AIを使いこなす他国企業との競争についていくためにChatGPTの業務使用を認めざるを得ない状況になると思います。

このように黒龍波とChatGPTとには後戻りできないという共通点があります。

2.単なる飛び道具でない

飛影が最初に黒龍波を発動させた是流戦の話から始めます。是流戦では飛影は是流に追い詰められた後、黒龍波を是流に向けて放ち、是流は暗黒武術会の舞台の壁の影と化します。つまり是流戦では黒龍波は霊丸のような飛び道具として用いられています。

飛影が2回目に黒龍波を発動させた武威戦でも飛影はまず武威に向けて黒龍波を放ちます。これに対し武威は持ち前のバトルオーラで黒龍波をなんと飛影に打ち返し、黒龍波が飛影を直撃します。誰もが飛影の敗北を確信するなか、漆黒の炎の中から現れた飛影が以下のセリフを発した後に武威を圧倒します。

「勘違いしてる奴が多いが、黒龍波は単なる飛び道具じゃない。術師の妖力を爆発的に高める栄養剤なのよ」

出典:冨樫義博先生「幽☆遊☆白書」(集英社)

つまり黒龍波は霊丸のような放出系の技では無く、使用者を飛躍的にパワーアップさせるための補助系の技なのです。

現時点のChatGPTも使用者のテキスト作成の補助という観点からは非常に強力ではあるものの、使用者の起点無しには動きませんし、使用者によるフィードバックを繰り返さなければ希望の品質のアウトプットを得られません。

このように黒龍波とChatGPTとには使用者をサポートするという共通点があります。

3.使用者の器(能力)を要求する

飛影が最初に黒龍波を発動させた是流戦に話を戻します。この戦いでは飛影は黒龍波を使って是流に圧勝はしたものの黒龍波に右腕を食われかけ、その後しばらく右腕が使えなくなります。これはその時に飛影に黒龍波を支配するだけの器(妖力)が無かったことに起因します(実際に是流戦では飛影自身がまだ黒龍波をコントロールできていないことを認めています)。その後飛影は妖力を高めて武威戦では黒龍波を喰える器を備えた術者まで成長します。

出典:冨樫義博先生「幽☆遊☆白書」(集英社)

ChatGPTも使用者の器(能力)を要求します。ハルシネーションとよばれる現象に代表されるようにChatGPTは誤情報を出力することがあります。したがってChatGPTが出力する情報の正誤を見極める能力が無い使用者はChatGPTの誤情報に喰われてしまいます。しかし使用者が成長し、自らの能力を高めればChatGPTが出力する情報の正誤を正確に判断でき、ChatGPTを使いこなすことができます。

このようにこのように黒龍波とChatGPTとには使用者の器を要求するという共通点があります。

結論

一見すると全く異なる世界に存在する「邪王炎殺黒龍波」と「ChatGPT」とですが、このように本質的な共通点が多く存在します。どちらも強力な力を持ち、その制御や使い道に慎重さが求められます。またどちらも使用者の成長を通じて、その力をより効果的に発揮することができるようになります。

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