欧州特許庁の分割出願では親出願との間でダブルパテントが問題となる場合があります。以下に欧州特許庁の判例そしてガイドラインに基づいてダブルパテントが問題となる場合とダブルパテントが問題とならない場合とを紹介します。
ダブルパテントが問題とならないケース
親出願の独立クレームと分割出願の独立クレームとの間でオーバーラップが無い
例:
親出願独立クレーム:A+B
子出願独立クレーム:X+Y
親出願の独立クレームと分割出願の独立クレームとの間で一部オーバーラップが有る
例:
親出願独立クレーム:A+B
子出願独立クレーム:A+C
備考:
T0307/03ではこのように親出願の独立クレームと分割出願の独立クレームとの間で一部オーバーラップがある場合にダブルパテントが問題生じるとしています。しかしこのT0307/03の考えはその後、複数の審決で否定されています(例えばT1423/07、T1252/16)。
親出願の独立クレームが分割出願の独立クレームを完全に包含し、親出願の従属クレームと分割出願の独立クレームとの間でオーバーラップが無い(T2461/10)
例:
親出願独立クレーム:A or B
親出願従属クレーム:B+C
子出願独立クレーム:A+B
親出願の独立クレームが分割出願の独立クレームを完全に包含し、親出願の従属クレームと分割出願の独立クレームとの間で一部オーバーラップが有る(T2461/10)
例:
親出願独立クレーム:A+B
親出願従属クレーム:A+B+C
子出願独立クレーム:A+B+D
親出願の独立クレームが分割出願の独立クレームを完全に包含し、かつ親出願の従属クレームが分割出願の独立クレームを完全に包含する(T2461/10)
例:
親出願独立クレーム:A+B
親出願従属クレーム:A+B+C
子出願独立クレーム:A+B+C+D
ダブルパテントが問題となるケース
親出願の独立クレームと分割出願の独立クレームとの範囲が同一
例:
親出願独立クレーム:A+B
子出願独立クレーム:A+B
備考:
親出願の独立クレームと分割出願の独立クレームとの範囲が同一と判断されるのは、クレームの文言が完全に一致している場合だけでなく、クレームの文言が異なっていても権利範囲が同一の場合も含まれます。例えば欧州特許庁は方法クレームとUSEクレームとの範囲が同一であると判断する場合があるので(ガイドラインF-IV, 4.16)、親出願の方法クレームをUSEクレームに書き換えただけの子出願はダブルパテントで拒絶され得ます。
親出願の従属クレームと分割出願の独立クレームとの範囲が同一(T1128/19)
親出願独立クレーム:A+B
親出願従属クレーム:A+B+C
子出願独立クレーム:A+B+C
備考:
現在の欧州特許庁のガイドラインではT1128/19が参照され、親出願の従属クレームと分割出願の独立クレームとの範囲が同一の場合ダブルパテントにより分割出願が拒絶されるとされていますが、欧州特許庁の審判部では親出願の従属クレームと分割出願の独立クレームとの範囲が同一の場合であってもダブルパテントの問題は発生しないとの考えが支配的です(例えば T118/91、T80/98、T2907/19)。






