基礎よりも出願人を減らす場合は、EP出願後に権利譲渡する方がよいです

日本の基礎出願はX社(自社)とY社(他社)との共願で行ったが、Y社は外国での権利化に興味がないので外国出願は自社のX社だけで行いたいという状況はよくあります。

この場合:

(1)外国出願前にY社がX社に外国出願に関する権利または優先権を譲渡し、最初からX社を単独の出願人として外国出願をする方法
(2)まずはX社とY社で共願で外国出願をして、出願後にY社がX社に持ち分の権利を譲渡し、X社を単独の出願人とする方法

の2つの出願方法があります。

日本企業はほとんどの場合(1)の最初からX社を単独の出願人として外国出願をする方法を選択しますが、この(1)の方法は欧州およびドイツでは(2)の方法と比較してリスクが大きいためお勧めしません。

まず(1)の出願前に権利譲渡をする方法ですと審査または異議過程で欧州特許出願前の権利譲渡を証明できなかった場合、先の出願(基礎日本出願)の出願人と後の出願(欧州またはドイツ出願)の出願人とが同一でないとして優先権喪失する事態を招くことがあります(EPC87条)。この場合問題発覚後、つまり欧州特許出願後に作成した権利譲渡書を提出したとしても優先権喪失を治癒することができません(T62/05、BpatGE 52, 207)。

 一方で(2)の出願後に権利譲渡をする方法では、仮に権利譲渡手続きに瑕疵があったとしても優先権自体に問題はありません。また瑕疵発覚後に改めて権利譲渡書を作成して提出すれば問題なくその瑕疵を解消することができます。

すなわち(1)のパターンは修復不可能な形で優先権喪失するリスクをはらみまが、(2)のパターンにはそのようなリスクはありません。特に日本ではなぜか外国出願前の権利譲渡が曖昧な形でなされることが多いため(1)のパターンのリスクは無視できません。

このため基礎日本出願よりも出願人を減らして欧州およびドイツで出願したい場合は、上述した欧州またはドイツ出願後に権利を譲渡する(2)の方法をお勧めします。

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