欧州特許庁におけるクレームの明確性(Clarity)の厳しさは日本の出願人の悩みのタネです。以下の記事ではそんな欧州特許庁の状況に腹を立てた日本の弁理士の方がドイツ代理人から受けたアドバイスを紹介しています。
この記事では、EESRでクレームが不明確と指摘された場合のドイツ代理人のおススメ戦略は:
「EESR,、第1OAまでは基本的に補正せず、意見書にて発明の内容を丁寧に説明」
「第2OAの時点でも解消されなかったらその時点で初めて補正」
とされています。
記事からはどのような技術分野で、そしてどのような理由で不明確と指摘されているのかを知ることができないため一概にという訳にはいきませんが、私個人的には上記戦略はお勧めできません。
理由は以下の通りです。
まず欧州特許庁の審査官は優秀な人が多いです。このため例えEESRの作成に与えられた時間が数か月と短くとも、発明を正確に理解してきます(引用文献の解釈が妥当でないことがよくありますが)。したがって出願に係る発明を理解出来なかったが故に不明確と指摘することはあまりありません。
また何をもってクレームを不明確とするかはガイドライン上で細かく定められていますので、EESRでの不明確であるという指摘の妥当性を判断するのは困難ではありません。このため指摘が妥当で補正が必要と判断した場合は、第2OAまで対応を引き延ばす理由はありません。
さらに欧州特許庁では所内ルールにより第1OA発行以降は審査の優先順位は下がります。このため第2OAまで様子を見るという戦略では審査が長期化してしまうリスクが飛躍的に高まってしまいます。
以上の理由からEESRでクレームが不明確と指摘された場合の私個人のおススメ戦略は:
EESR対応の時点で指摘の妥当性を判断し、妥当であれば即座に補正で対応
です。
またあまりに欧州特許庁での明確性に関する指摘が多い場合は、欧州特許庁に出願する前に欧州代理人にクレームをレビューしてもらい、明確性に関する指摘を減らすための修正を依頼することも良いかもしれません。
さらに記事では電話インタビューについても言及されていましたが、欧州特許庁で審査官が電話インタビューに応じてくれる可能性が高いのは:
1.OAで審査官が指摘している内容が良く分からず、それについて質問する場合、および
2.記載不備等の指摘を解消するための補正案について相談する場合
の2つです。
このため欧州特許庁で審査官にインタビューを打診する際には、「発明について説明させて下さい」ではなく、「OAについて質問があるのですが。。」か「記載不備を解消する補正について相談なのですが。。」と切り出すことでインタビューに応じてもらえる可能性を高めることができます。
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