ドイツ弁理士になるために必要なHagen研修ってどんなものなの?

過去の記事「ドイツ弁理士受験資格獲得のための一般法の履修を開始しました」で、ドイツ弁理士試験の受験資格を得るためには2年間の通信教育での一般法の履修過程を修了することが要件であることを説明しました。この履修過程はNordrhein-Westfalen州にあるHagen通信大学によって提供されることにちなんでHagen研修(Hagen Studium)とも通称されています。

このHagen研修についてよくご質問を頂戴するので、Hagenのカリキュラムをまとめてみました。

参加資格

Hagen研修へは誰でも参加できるわけでは無く以下の①~③つのうちいずれかの参加資格が求められます(試験規則2条)。
①特許事務所に所属する弁理士研修生
②特許着事務所でフルタイムで5年以上働いた特許技術者
③欧州特許弁理士

履修科目

Hagen研修で履修する科目は以下の通りです。

1年目:
 民法
 商法
 会社法
 憲法
 行政法
 労働法

2年度:
 不正競争防止法
 競争制限禁止法
 民事訴訟法
 商標法
 意匠法
 ヨーロッパ法
 ライセンス契約
 弁理士法

研修の流れ


① 1週間の講義聴講@Hagen
研修開始時に1週間Hagen通信大学の研修施設内で滞在型研修に参加します。大体30名ぐらいのドイツ弁理士の卵がドイツ各地から集まりこの一週間で寝食を共にしながら一般法の講義を聴講します。研修施設はHagenの市街地から離れており、周りにはこれといった遊べる場所もありません。このため娯楽は講義後に研修生同士でお酒を飲みながらの雑談ぐらいしかありません。

② 課題提出×10
Hagen大学での講義の聴講が終わると、予め与えられた10の課題を大体1月に1回のペースでこなしていきます。1年目は主に民法、会社法に関する課題が課されます。この10の課題のうち5つに合格できれば第1筆記試験の受験資格が与えられます(試験規則5条)。

③ 第1筆記試験@Hagen
第1筆記試験はHagen通信大学の研修施設内で再度実施される1週間の滞在型研修の途中で行われます。Hagen通信大学の研修施設に到着して直ぐに試験が始まるのではなく、到着してから最初の2日間に試験準備のための講義があります。この間に最後の足搔きをします。そして到着から3日目に第1筆記試験が実施されます。試験後は皆で打ちあがります。試験後も講義の聴講という形で滞在型研修は続くのですが、試験のプレッシャーから解放された研修生達は完全に腑抜け状態です。

④  課題提出×6
第1筆記試験が終わるとまた予め与えられた課題を定期的にこなしていきます。1年目と異なり2年目に与えられる課題の数は6つです。このうち3つに合格出来れば第2筆記試験そして口頭試験の受験資格が与えられます(試験規則5条)。

⑤  第2筆記試験&口頭試験@München
第2筆記試験および口頭試験はHagenではなくMünchenで開催されます。第1筆記試験、第2筆記試験そして口頭試験の点数の合計が最高点数の50%以上であればHagen研修が修了となります。一方で50%に満たなかった場合は、試験を最大2回までやり直すことができます(試験規則7条)。

Hagen研修に参加してみて

Hagen研修には開始時と第1筆記試験時に滞在型研修があります。これは自分が勤務する事務所外のドイツ弁理士の卵達とつながれる非常に良い機会でした。1週間、研修施設に缶詰めにされ寝食を共にすると必然的に仲良くなれます。

また1年目と2年目の課題に関しては大学から提供されたスクリプトを読んで真面目に解答すればまず不合格になることはありません。このため課題の提出はそれほど負担にはなりません。

一方で試験はしんどいです。まず難易度が課題とは全く異なります。与えられた課題だけを真面目にこなすだけでは試験に合格できる実力が付きません。このため別途購入した問題集を解いたり、過去問について情報交換をしたりして試験準備にそれなりに時間をかけなければ合格できません。特に筆記試験は多いときには受験者の半数が不合格になることもあると聞ききます。一方でドイツ弁理士試験の合格率は9割以上なのでHagen研修の筆記試験のほうがドイツ弁理士試験よりも難易度が高いと言えます。

私は先に欧州特許弁理士試験に合格してからHagen研修に参加しましたが、多くの研修生は欧州特許弁理士試験対策とHagen研修の試験対策とを並行させています。このように欧州特許弁理士試験対策とHagen研修の試験対策とを並行させている研修生にとっては負担はかなり大きいと思います。

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