ある国における特許権者の攻撃性(侵害訴訟を提起する可能性)はその国でビジネスを行う際のリスクに密接に関連するため気になります。この攻撃性はその国の特許侵害訴訟の件数からぼんやり推し量られているのが現状かと思います。しかしながら特許侵害訴訟の件数からだけでは特許権者の攻撃性はわかりません。例えば現存特許が1000件しかないのにも関わらず年間100件の特許侵害訴訟が提起される国における特許権者は、現存特許が100万件で年間1000件の特許侵害訴訟を抱える国における特許権者よりもより攻撃的であると言えるからです。
そこで国別の2012年の現存特許および特許侵害訴訟の件数に基づいてどの国において特許権者が攻撃的かを攻撃性インデックスなる指標を用いて調べてみました。
I.対象国
The Global IP Project の2015年の資料(Significant-Trends-Slides-25-Jan-2015.pdf)で紹介された特許侵害訴訟がアクティブな国ベスト10(中国、米国、ドイツ、フランス、イタリア、日本、インド、台湾、イギリス、カナダ)を対象としました。
II.参照データ
2012年の特許侵害訴訟の件数:
The Global IP Project の資料で開示された2010年~2012年の特許侵害訴訟の件数を3で割った数を2012年の特許侵害訴訟の件数としました。
2012年の現存特許の件数:
中国、米国、ドイツ、フランス、イタリア、日本、インド、イギリス、カナダについてはWIPO公表の2012年の現存特許の件数(http://www.wipo.int/ipstats/en/statistics/country_profile/)を参照しました。台湾については台湾特許庁発行の統計データ(https://www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=640384&ctNode=6830&mp=2)を参照しました。
III. 計算方法
攻撃性インデックス=2012年の特許侵害訴訟の件数/2012年の現存特許の件数
IV. 結果
結果を以下のテーブルおよびグラフに示します。
テーブル:
グラフ:
V. 考察
攻撃性インデックスが高いほどその国において特許権者が攻撃的であることを示唆します。中国、インド、ドイツで高くて日本で低いことは何となく予測できましたが、イタリアが思いのほか高いことに驚きました。これら攻撃性インデックスが高い国では特許侵害訴訟に巻き込まれるリスクが高いため、これらの国にビジネスの拠点がある場合または競合他社がいる場合にはカウンター用に特許を保持しておくことが好ましいと言えます。
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