「制御する」という動詞は、英訳において多くの場合「control」と訳されます。
では独訳ではどうでしょうか?つい英語の「control」に倣って「kontrollieren」と訳してしまいがちですが、「kontrollieren」は、ドイツ語では「管理する」または「支配する」という意味を有し、「制御する」とはニュアンスが異なるので適切ではありません。
独訳においては、「制御する」は正しくは「steuern」または「regeln」と訳されます。ここで注意すべきは制御工学分野におけるドイツ語においては、「steuern」と「regeln」とは、明確に使い分けられているという点です。
以下、「steuern」および「regeln」の制御工学における意味について説明します。
・Steuern
ドイツの国家規格であるDIN規格によると、「steuern」とは、あるシステムにおいて1または複数の入力が、システム特有の法則に従って出力に影響を与える工程を意味します。また「steuern」で特徴的なのは、そのオープンまたはクローズドの作用経路であり、この作用経路では入力値によって影響された出力値が、再び同じ入力値を介して自身に作用することはありません。
わかりずらいので例を用いて説明します。
「steuern」の例として最も簡単なのがスイッチによる照明のオン/オフの切替です。このシステムではスイッチがオンにされるという入力によって照明が点灯されるという出力が達成されます。このとき当該システムでは照明の状態(出力)とスイッチの状態(入力)とを比較するということは行いません。この場合、照明の状態は「steuern」されています。
・Regeln
DIN規格によると、「regeln」は、あるシステムにおいてある値を継続的に計測し、計測値を規定値と比較し、計測値が規定値からずれたときに、計測値を修正する工程を意味します。
「regeln」の例として挙げられるのがエアコンです。エアコンではまず希望の温度(規定値)を設定します。そしてエアコンは実際温度(測定値)を測定し、設定温度と比較し、実際温度が設定温度からずれているときは、温風または冷風を供給します。このシステムでは測定値と規定値とが継続的に比較されます。この場合、温度は「regeln」されています。
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