「●●側」を「●● side」と訳すと誤解を招くことが多いです

日本語の明細書では「●●側」という表現はよく用いられます。この「●●側」という表現は通常「●● side」と訳されますが、適切でない場合が多々あります。

「Xの前側に配置されたY」という表現を例に考えてみましょう。
日本語における「Xの前側に配置されたY」という表現は、以下の二つの構成を表すものとして用いられます。

1.YがXから離間せず、Xの前部位に配置される構成(構成①)
Bild2

2.YがXから離間してXの前に配置される構成(構成②)
front2

しかし「Xの前側に配置されたY」を「Y arranged at the front side of X」と訳してしまうとどう解釈されるでしょう。
欧米人は「front side」を通常「前の部分」または「正面」と解するので「Y arranged at the front side of X」は以下の構成を意味することになります。

1.YがXから離間せず、Xの前部位に配置される構成(構成①と同じ)
Bild2

2.YがXから離間せず、Xの正面に配置される構成(構成③)
front3

すなわち「Y arranged at the front side of X」には上記構成②が含まれなくなります。また構成①を表現したい場合であっても構成③と混同される恐れがあります。

このため「Xの前側に配置されたY」が構成①を表現したい場合は「Y arranged at the front part of X」と、構成②を表現したい場合は「Y arranged in front of X」と訳した方が誤解が少なくなります。

「後側」、「上側」、「下側」、「●●部材側」といった表現にも上記と同様の問題が生じるので注意が必要です。

特に「中央側」を「center side」などと訳してしまうと欧州の審査官が「中央なのか、側(わき)なのか、はっきりしろ!」とブチ切れることがあるので別の表現を用いたほうが無難です。

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