ドイツ人には気を付けろ!

日本のあるメーカーの知的財産部における知財部員(以下「部員」)と知財部長(以下「部長」)との会話:

部員:「部長!大変です。ドイツのX社からうちの商品AがX社のドイツ特許Bを侵害をしているとの警告が届きました。」

部長:「ドイツのX社?はて、聞いた事がない会社だが。。しかもわが社は商品Aを日本国内でしか製造・販売していないぞ。なんでドイツ特許Bの話が出てくるんだ?」

部員:「ドイツのY社のカイザーさんをご存知ですか?」

部長:「ああ、あの日本好きのドイツ人で日本に遊びにきては、わが社の商品Aをいつも大量に購入していくドイツのY社のカイザーさんのことか?この間、六本木のクラブで接待したらえらいご機嫌だったそうじゃないか。そのカイザーさんがどうしたんだ?」

部員:「・・・(六本木はどうでもいい・・・)・・・そのカイザーさんが勤めるY社なんですが、ドイツで商品Aを販売しているらしいんです。」

部長:「それなら特許侵害をしているのはY社だろ。ドイツで製造販売しているならまだしも、日本でしか製造販売していないうちには関係ない事だから無視しておきなさい。」

部員:「それが調べてみたところ無視するというのは問題があるようです。。。。」

部長:「なに!?」

部員:「ドイツ連邦裁判所の判決によると、ドイツでは特許侵害者には、悪意で第三者の特許権侵害行為を支持した者も含まれ、権利行使の追及を受けるそうです(判例1参照)。」

部長:「日本の民法719条の共同不法行為の規定と似たようなものか。しかしわが社はドイツ特許Bの存在など知る余地も無かったわけだし、悪意でY社の行為を支持したわけじゃないぞ。」

部員:「おっしゃるとおりです。現在までわが社がY社に商品Aを販売していた行為については、なんら問題がないかと思います。」

部長:「ふむ、じゃあ何が問題なんだ?」

部員:「問題はわが社がX社の警告によってY社がX社の特許を侵害しているという事実を本日知ってしまったことです。こうなると今後わが社がY社に商品Aを販売し続ける行為は、悪意で特許侵害行為を支持するものになってしまうそうです。」

部長:「なるほど、そうするとわが社が権利侵害者になってしまうということか。。。けどわが社の拠点は日本だぞ!それでもドイツにおける第三者の行為に責任を持たないといけないのか?」

部員:「ドイツの最近の判例によりますと、この共同不法行為の原則を在外者に当てはめることを支持した判決があるそうです(判例2参照)。したがって拠点が日本であろうとドイツ特許Bに基づいて権利行使の追及を受けてしまうことはありうるかと。。。」

部長:「そうか。。ということは今後カイザーさんに商品Aを売るとX社から権利行使を受けてしまう恐れがあるということか。。。今後カイザーさんに限らずドイツ人を六本木で接待する際には注意が必要だな。」

部員:「・・・・(だから六本木はどうでもいい・・・)・・・・」

参考資料
判例1:ドイツ連邦裁判所判決 Xa ZR 2/08
判例2:マンハイム地裁判決 Az. 7 O 139/12

コメント

タイトルとURLをコピーしました