どの国の代理人がEPOでの異議に強いか?

今年から無料になった欧州特許庁の検索ツールであるEP Bulletin Searchを使って色々と遊んでいます。今回は代理人の拠点国によって欧州特許庁における異議の結果に差があるかを調べてみました。

I. 方法

調査に用いたツール:

EP Bulletin Search

データベース:

BULL2018/15

調査対象年:

2017年

調査対象の代理人の拠点国:

ドイツ、イギリスおよびフランス

検索式:

 特許取消(Patent revoked)決定:PCRV=2017*
 補正維持(Patent maintained as amended)決定:PCPA=2017*
 異議却下(Opposition rejected)決定:OPRD=2017*
 特許権者側代理人の国別特許取消決定:PCRV=2017*and RECY=DE(GBまたはFR)
 特許権者側代理人の国別補正維持決定:PCPA=2017*and RECY=DE(GBまたはFR)
 特許権者側代理人の国別異議却下決定:OPRD=2017*and RECY=DE(GBまたはFR)
 異議申立人側代理人の国別特許取消決定:PCRV=2017*and OPCY=DE(GBまたはFR)
 異議申立人側代理人の国別補正維持決定:PCPA=2017*and OPCY=DE(GBまたはFR)
 異議申立人側代理人の国別異議却下決定:OPRD=2017*and OPCY=DE(GBまたはFR)

II. 結果

1.特許権者の代理人の拠点国別異議の結果

特許を防御する立場にある代理人の拠点国別の異議結果の比率です。Averageは2017年の異議部の全決定の比率です(注意)。

グラフ1

2.異議申立人の代理人の拠点国別異議の結果

特許を攻撃する立場にある代理人の拠点国別の異議結果の比率です。

グラフ2

III. 考察

異議の結果は特許権者によって準備される証拠や情報によって大きく影響されるので代理人の腕のみに起因するとは言えませんが、上記結果は拠点国によって代理人の異議のパフォーマンスに差がある可能性を示唆します。

例えば異議において代理人が特許権者の代理をする場合、すなわち代理人が特許を防御する立場にあるときには、特許取消率が低く、異議却下率(特許が補正なしで維持される確率)が高いことが代理人の防御パフォーマンスが高いことを示唆します。上記グラフ1からも分かるように代理人が異議において特許を防御する立場にあるときには、調査対象国の中ではドイツ代理人の特許取消率が最も低く(31%)かつ異議の却下率が最も高い(24%)という結果になりました。この結果は、踏査対象国の中ではドイツ代理人の防御パフォーマンスが最も高いことを示唆します。

一方、異議において代理人が異議申立人の代理をする場合、すなわち代理人が特許を攻撃する立場にあるときは、特許取消率が高く、異議の却下率が低ければ攻撃パフォーマンスが高いと言えます。上記グラフ2からも分かるように代理人が異議において特許を攻撃する立場にあるときには、調査対象国の中ではイギリス代理人の特許取消率が最も高く(44%)かつ異議却下率が最も低い(17%)という結果になりました。この結果は、踏査対象国の中ではイギリス代理人の攻撃パフォーマンスが最も高いことを示唆します。

代理人の拠点国によって異議の結果によって差があることはどの国の代理人に依頼をすべきかの観点から非常に興味深いことだと思います。さらに踏み込んで代理人別の異議の結果についても調べてみたいと思います(ただこれは少々生々しいデータになるので公開できるかは分かりませんが。。。)

注意

グラフ1および2のAverageの数値は本来であれば欧州特許庁発行の2017年のアニュアルレポートで開示された数値と一致すべきなのですが両者の間には剥離があります。色々と調べてみたところどうやらEP Bulletin Searchでは異議の決定後、Appealに移行・係属中のケースの異議の決定が無かったもととして取り扱われることが原因と考えられます。どなたかEP Bulletin Search でAppealに係属中のケースの異議部の決定の結果を調べる手法をご存じの方がいらっしゃいましたらご教示ください。

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