欧州単一特許制度についてよくあるQ&A

  1. I. 欧州単一効力特許について
      1. Q. 欧州単一効特許(unitary patent)とはなんですか?
      2. Q. これまでの欧州特許と何が違うのですか?
      3. Q. これまでの欧州特許とは取得手続きが異なりますか?
      4. Q. 単一効申請に庁費用はかかりますか?
      5. Q. 単一効申請を取り下げることはできますか?
      6. Q. 欧州単一効特許を取得するには単一効申請だけで十分ですか?
      7. Q. 欧州特許の全文翻訳の提出の期限はいつまでですが?
      8. Q. 欧州特許の全文翻訳は権利範囲の解釈に影響を及ぼしますか?
      9. Q. 欧州特許の全文翻訳は機械翻訳でもOKですか?
      10. Q. 欧州単一効特許がカバーする国はどこですか?
      11. Q. UPC協定発効直後の欧州単一効特許がカバーする国は具体的にどこですか?
      12. Q. どの国がUPC協定に批准したかをリアルタイムでチェックできるサイトはありますか?
      13. Q. 欧州単一効特許がカバーする国は欧州単一効特許が登録された後にUPC協定に批准した国にも拡大されますか?
      14. Q. 欧州単一効特許がカバーする国はEPOのRegisterで確認できますか?
      15. Q. 欧州単一効特許を選択した場合であっても平行して従来のように欧州特許を有効化することができますか?
      16. Q. 欧州単一効特許について実施権を許諾する際、実施の範囲を一部の参加加盟国に限定することは可能ですか?
      17. Q. 欧州単一効特許を従来の欧州特許に変更することはできますか?
      18. Q. 既に付与された従来の欧州特許を欧州単一効特許に変更することはできますか?
      19. Q. 欧州単一効特許と国内特許とが両立することはできますか?
      20. Q. 同じ基礎出願に基づく欧州単一効特許とドイツ国内特許が両立できるとことですが、2つの権利の関係はどうなるのでしょうか?
      21. Q. 親出願が欧州単一効特許となると子出願も欧州単一効特許にしなければなりませんか?
      22. Q. 欧州単一効特許の譲渡契約にはどこの国の法律が適用されますか?
      23. Q. 欧州単一効特許の維持費用はどれぐらいですか?
      24. Q. 欧州単一効特許の維持費用の減額はありますか?
      25. Q. ライセンスオブライトの際にライセンス料の額について当事者間で同意に至らなかった際のための仲裁機関はありますか?
      26. Q. どんな欧州特許が欧州単一効特許に向いていますか?
      27. Q. 欧州単一効特許のSPC版(存続期間の延長)も導入されますか?
  2. II. 統一特許裁判所について
      1. Q. 統一特許裁判所(Unified Patent Court, UPC)とはなんですか?
      2. Q. 既存の従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟も統一特許裁判所が管轄するのですか?
      3. Q. ロンドンの中央部はどうなりましたか?
      4. Q. イギリスやスイス、スペインなどUPCの参加国でない国については、裁判所の管轄はUPCではなく各国にありますか?
      5. Q. UPCでのApplicable Lawは何ですか?
      6. Q. UPCに証拠保全制度はありますか?
      7. Q. UPCによる証拠保全の決定の効力がUPC参加国以外にもおよぶことがありますか?
      8. Q. UPCに仮差止制度はありますか?
      9. Q. UPCの包袋は閲覧可能ですか?
      10. Q. UPCの第一審はどれぐらいの時間がかかりますか?
      11. Q. UPCにおける裁判手続きの費用はどれぐらいですか?
      12. Q. UPC協定はいつ発効しますか?
  3. III. Opt Outについて
      1. Q. Opt Outって何ですか?
      2. Q. 欧州単一効特許についてもOpt Outはできますか?
      3. Q. 既存の欧州特許についてOpt Outをしなかった場合はその欧州特許は欧州単一特許になるということですか?
      4. Q. 例えばドイツ、フランスで有効化された欧州特許についてフランスについてだけOpt Outすることは可能ですか?
      5. Q. Opt Outに庁費用はかかりますか?
      6. Q. Opt Outを業者または代理人に依頼した場合の費用はどれぐらいですか?
      7. Q. Opt Outした後にやっぱり専属管轄をUPCに戻すことはできますか?
      8. Q. 特許権が共有の場合、Opt Outは共有権者全員で申請しなければならないですか?
      9. Q. 最近会社の住所変更をしたのですが、過去の欧州特許については古い住所のままとなっています。古い住所のままでOpt Out申請しても問題ないですか?
      10. Q. 特許権が共有の場合でも欧州代理人がOpt Outを申請する場合は、欧州代理人1人でOpt Outを申請できますか?
      11. Q. 特許権が共有の場合、Opt Out申請に際に共有権者全員の同意書や宣言書のようなものは必要になりますか?
      12. Q. Opt Outの効果は経過期間終了後も持続しますか?
      13. Q. Opt Outの効果はSPC(特許権の延長登録)にも及びますか?
      14. Q. Opt Out申請の後にSPCが登録されたとしてもですか?
      15. Q. Opt Outはいつから申請できますか?
      16. Q. Sunrise periodを過ぎるとOPT OUTは出来ないと言うことですか?
      17. Q. Opt Outの申請には代理人が必要ですか?
      18. Q. 委任状無しでOpt Out申請を出来るのは誰ですか?
      19. Q. Opt Outはどうやって申請しますか?
      20. Q. CMSへのログインには電子ID証明が必要ですか?
      21. Q. 権限の無い第三者でもOpt Outができてしまうって本当ですか?
      22. Q. Opt Outされた欧州特許は公開されますか?申請者は把握できるのでしょうか?
      23. Q. Opt Outしない場合、侵害訴訟を国内裁判所およびUPCで並行して提起することは可能ですか?
      24. Q. Opt Outしない場合、侵害訴訟は国内裁判所、取消訴訟はUPCが管轄するということはあり得ますか?
      25. Q. Opt Outして各国裁判所で裁判をした場合、各国の国内法が適用されるとの理解でよいですか?
      26. Q. どんな欧州特許についてOpt Outを申請すべきですか?
      27. Q. Opt Outをしないメリットはありますか?

I. 欧州単一効力特許について

Q. 欧州単一効特許(unitary patent)とはなんですか?

A. 一言でいうとスペイン、クロアチア、ポーランドを除く欧州連合(EU)内で一括で効力を有する特許です。

Q. これまでの欧州特許と何が違うのですか?

A. これまでの欧州特許は各EPC加盟国の特許の束でした。つまり侵害訴訟または取消手続はその欧州特許が移行した(有効化された)各EPC加盟国で個別に提起しなければなりませんでした。一方で欧州単一効特許は全参加国において一括して有効な特許です。欧州単一効特許に関する侵害訴訟および取消手続は統一特許裁判所で提起することができ、これまで欧州特許のような各国での個別提起は必要ありません。

Q. これまでの欧州特許とは取得手続きが異なりますか?

A. 出願から特許査定までの手続きはこれまでの欧州特許と同様に欧州特許庁が管轄します。特許査定後、欧州特許公報の公開1ヶ月以内(延長不可)に単一効申請(Request for unitary effect)をすることにより欧州単一効特許を取得することができます。

ソース: https://www.epo.org/law-practice/unitary/unitary-patent/applying.html

Q. 単一効申請に庁費用はかかりますか?

A. いいえ。単一効申請に庁費用はかかりません。

ソース: https://www.epo.org/law-practice/unitary/unitary-patent.html

Q. 単一効申請を取り下げることはできますか?

A. はい。欧州単一効特許の登録がなされるまでは申請を取りさげることができます。

ソース:Unitary Patent Guide、段落65

Q. 欧州単一効特許を取得するには単一効申請だけで十分ですか?

A. いいえ。移行期間内(制度導入から6~12年)は以下の欧州特許の全文翻訳の提出が求められます。

・EPOでの手続き言語がフランス語、またはドイツ語の場合
  → 欧州特許全文の英訳

・EPOでの手続き言語が英語の場合
  → 欧州特許全文を1のEU公式言語への翻訳

ソース:Article 6(1) Regulation (EU) No 1260/2012

Q. 欧州特許の全文翻訳の提出の期限はいつまでですが?

A. 文翻訳は単一効申請の申請書に添付します。したがって単一効申請と同時に提出します。

ソース:Regulation (EU) No 1260/2012第6条(1)

Q. 欧州特許の全文翻訳は権利範囲の解釈に影響を及ぼしますか?

A. いいえ。欧州特許の全文翻訳に法的効力はありません。

ソース: Unitary Patent Guide、段落57

Q. 欧州特許の全文翻訳は機械翻訳でもOKですか?

A. REGULATION (EU) No 1260/2012の(12)は、「translations should not be carried out by automated means and their high quality should contribute to the training of translation engines by the EPO.」と機械翻訳の使用の禁止を明言しています。一方でおそらくEPOは全文翻訳をチェックすることはないので仮に機械翻訳を使用したとしても発覚することは無いかと思います。機械翻訳の使用は自己判断および自己責任でお願いいたします。

Q. 欧州単一効特許がカバーする国はどこですか?

A. 欧州単一効特許が登録される時点で既にUPC協定に批准している国のみをカバーします。 UPC協定参加国であっても欧州単一効特許が登録される時点でまだUPC協定に批准していない国はカバーされません。

ソース: Article 18(2) Regulation (EU) No 1257/2012

Q. UPC協定発効直後の欧州単一効特許がカバーする国は具体的にどこですか?

A. 2024年6月10日時点で以下の17ヶ国です。

Austria, Belgium, Bulgaria, Denmark, Estonia, Finland, France, Germany, Italy, Latvia, Lithuania, Luxembourg, Malta, the Netherlands, Portugal, Slovenia, Sweden

また2024年9月1日からルーマニアが加わり18ヶ国がカバーされます。

ソース: https://www.epo.org/en/news-events/news/romania-join-unitary-patent-system-1-september-2024

Q. どの国がUPC協定に批准したかをリアルタイムでチェックできるサイトはありますか?

A. はい。以下のEPOのサイトからチェック可能です。

Unitary Patent | epo.org
Last updated: August 2024

Q. 欧州単一効特許がカバーする国は欧州単一効特許が登録された後にUPC協定に批准した国にも拡大されますか?

A. いいえ。欧州単一効特許がカバーする国は登録後の批准国によって拡大されることはありません。

ソース: Article 18(2) Regulation (EU) No 1257/2012

Q. 欧州単一効特許がカバーする国はEPOのRegisterで確認できますか?

A. はい。確認可能です。

ソース: Rule 16(1)(g) UPR

Q. 欧州単一効特許を選択した場合であっても平行して従来のように欧州特許を有効化することができますか?

A. はい。欧州単一効特許がカバーしない国(登録時点でUPC協定に未批准の国+非EU加盟国+スペイン、ポーランド、クロアチア)については欧州単一効特許を選択した場合であっても平行して従来のように欧州特許を有効化することができます。一方で欧州単一効特許がカバーする国については平行して欧州特許を有効化することはできません。

ソース: Unitary Patent Guide、段落16~18

Q. 欧州単一効特許について実施権を許諾する際、実施の範囲を一部の参加加盟国に限定することは可能ですか?

A. はい。可能です。

ソース: Article 3(2) Regulation (EU) No 1257/2012

Q. 欧州単一効特許を従来の欧州特許に変更することはできますか?

A. いいえ。一度付与された欧州単一効特許を従来の欧州特許に変更することはできません。

Q. 既に付与された従来の欧州特許を欧州単一効特許に変更することはできますか?

A. いいえ。一度付与された従来の欧州特許を欧州単一効特許に変更することはできません。

Q. 欧州単一効特許と国内特許とが両立することはできますか?

A. はい。以下の国では可能です。
Austria
Denmark
Estonia
Finland
France
Germany
Malta
Slovenia
Sweden

ソース:https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/national-measures-up.html

Q. 同じ基礎出願に基づく欧州単一効特許とドイツ国内特許が両立できるとことですが、2つの権利の関係はどうなるのでしょうか?

A. 両特許は完全に独立した別の権利として取り扱われます。詳しくは「欧州特許とドイツ国内特許との間のダブルパテントの取扱い UPC協定発効後編」をご参照ください。

Q. 親出願が欧州単一効特許となると子出願も欧州単一効特許にしなければなりませんか?

A. いいえ。子出願は親出願から独立しています。このため親出願が欧州単一効特許となっても子出願は従来の欧州特許とすることができます。

Q. 欧州単一効特許の譲渡契約にはどこの国の法律が適用されますか?

A. 過去の記事「欧州単一効特許に基づくライセンス契約または譲渡契約にはどの国の法律が適用されるか?」をご参照ください。

Q. 欧州単一効特許の維持費用はどれぐらいですか?

A. ドイツ、フランス、イタリア、オランダの維持年金の合計額に相当し、以下の通りです。

2年度  35€
3年度  105€
4年度  145€
5年度  315€
6年度  475€
7年度  630€
8年度  815€
9年度  990€
10年度  1175€
11年度  1460€
12年度  1775€
13年度  2105€
14年度  2455€
15年度  2830€
16年度  3240€
17年度  3640€
18年度  4055€
19年度  4455€
20年度  4855€

ソース:https://www.epo.org/law-practice/unitary/unitary-patent/cost.html

Q. 欧州単一効特許の維持費用の減額はありますか?

A. はい。ライセンスの付与を拒まないことを宣言しますと(ライセンスオブライト)、維持年金が15%減額されます。

ソース:Rule 12 UPR, Article 3 RFeesUPP

Q. ライセンスオブライトの際にライセンス料の額について当事者間で同意に至らなかった際のための仲裁機関はありますか?

A. はい。この場合当事者はUPC協定32条(1)(h)に基づき統一特許裁判所にライセンス料の決定を求める申請を提出できます。この申請の裁判所費用は11000€です。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/sites/default/files/upc_documents/ac_05_08072022_table_of_court_fees_en_final_for_publication_clean.pdf

Q. どんな欧州特許が欧州単一効特許に向いていますか?

A. 移行国が多く、価値が比較的低い特許が向いているかと思います(過去の記事「どのような特許が欧州単一効特許に適しているか?」を参照ください)。

Q. 欧州単一効特許のSPC版(存続期間の延長)も導入されますか?

A. いいえ。現時点ではまだ導入が正式には決定されていません。一方で欧州委員会は欧州単一効SPCの導入を検討しています。しかしどの機関が欧州単一効SPCを審査するのか、市販承認(MA)によってカバーされていない国への欧州単一SPCの効力はどうなるのかなど決まっていないことは多いです。

ソース:https://www.penningtonslaw.com/news-publications/latest-news/2022/unitary-supplementary-protection-certificates-spcs-may-become-a-reality

II. 統一特許裁判所について

Q. 統一特許裁判所(Unified Patent Court, UPC)とはなんですか?

A. 欧州単一効特許および従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟を管轄し、第一審裁判所と控訴裁判所とからなる裁判所です。第一審裁判所は主に取消訴訟を管轄する中央部(パリ、ミュンヘン)と、主に侵害訴訟を管轄する地方・地域部とからなります。

Q. 既存の従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟も統一特許裁判所が管轄するのですか?

A. はい。既存の従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟も統一特許裁判所が管轄します。一方で移行期間中(7~14年)は従来の欧州特許に関する取消手続および侵害訴訟は統一特許裁判所ではなく各国で個別に提起することもできます。

ソース:Article 83(1) UPCA

Q. ロンドンの中央部はどうなりましたか?

A. 2023年5月16日の統一特許裁判所のプレスリリースにより、ロンドンにおける中央部が担当するはずであったIPCセクションA(生活必需品)がパリの中央部に、IPCセクションC(化学、冶金)がミュンヘンの中央部に割り当てられることが公表されました。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/en/news/decision-provisional-distribution-actions-related-patents-ipc-sections-and-c-pending-central

Q. イギリスやスイス、スペインなどUPCの参加国でない国については、裁判所の管轄はUPCではなく各国にありますか?

A. はい。参加国でない国にはUPCの判決の効力が及びません。したがって仮にイギリス、スイス、スペインで有効化された従来の欧州特許がUPCで取り消されたとしてもこれらの国には取消の効力は及びません。

ソース:Art. 34 UPCA

Q. UPCでのApplicable Lawは何ですか?

A. 侵害訴訟案件ではUPC協定が適用されます(Art. 24, 25, 26, 27, 29 UPC)。特許取消訴訟では欧州特許条約(EPC)が適用されます(Art. 24 UPC)。また手続法としてはUPCの手続規則(Rules of Procedure of the Unified Patent Court)が適用されます。

Q. UPCに証拠保全制度はありますか?

A. はい。Rule 192~198 Rule fo Proceduresで「Saisie」が証拠保全制度として明記されています。証拠保全は基本的に申請者だけでなく相手側も関与する当事者系の手続きですが、一定要件の下、相手側へのヒアリング無しでもSaisieが認められ得ます。

Q. UPCによる証拠保全の決定の効力がUPC参加国以外にもおよぶことがありますか?

A. はい。Brussels I Regulation 1215/2012によりUPC参加国でないEU加盟国に決定の効力が及ぶことがあります。

Q. UPCに仮差止制度はありますか?

A. はい。あります。一定条件の下、相手側へのヒアリング無しで仮差止めが認められることもあります。

ソース:Art 62 UPCA

Q. UPCの包袋は閲覧可能ですか?

A. はい。UPCによる判決は公開されます。また裁判所および当事者による書面はCase Management Systemによってその存在が公開されます。裁判所および当事者による書面の内容は理由があれば閲覧を請求することができます。

ソース:Rule 262 (1) RoP

Q. UPCの第一審はどれぐらいの時間がかかりますか?

A. 裁判所手続規則によると通常は最終口頭審理まで1年を目標としています。

ソース:Preamble 7 RoP

Q. UPCにおける裁判手続きの費用はどれぐらいですか?

A. 「UPCにおける裁判手続にかかる費用」をご参照ください。

Q. UPC協定はいつ発効しますか?

A. 2023年6月1日に発効します

ソース:https://www.unified-patent-court.org/en/news/germany-ratifies-agreement-unified-patent-court

III. Opt Outについて

Q. Opt Outって何ですか?

A. 従来の欧州特許についての統一特許裁判所の管轄の除外するための手続きです。 UPC協定の移行期間かつ統一特許裁判所に訴訟が既に提起されていない場合に申請することができます。統一特許裁判所での取消訴訟による従来の欧州特許のセントラルアタックを防ぐことができます。

ソース:Article 83(3) UPCA

Q. 欧州単一効特許についてもOpt Outはできますか?

A.  いいえ。欧州単一効特許については統一特許裁判所の専属管轄を除外することはできません。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/faq/opt-out

Q. 既存の欧州特許についてOpt Outをしなかった場合はその欧州特許は欧州単一特許になるということですか?

A. いいえ。Opt Outは単に既存の欧州特許に関するUPCの管轄権を除外するものです。Opt Outしなかったからといって既存の欧州特許が欧州単一効特許に変更されるわけではありません。

Q. 例えばドイツ、フランスで有効化された欧州特許についてフランスについてだけOpt Outすることは可能ですか?

A. いいえ。Opt Out申請は有効化された全ての加盟国に対してなされます。したがって 一部の加盟国についてのみOpt Outすることはできません。

ソース:Rule 5.1 (b) RoP 

Q. Opt Outに庁費用はかかりますか?

A. いいえ。Opt Outの庁費用は無料です。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/news/upc-court-fees-and-recoverable-costs

Q. Opt Outを業者または代理人に依頼した場合の費用はどれぐらいですか?

A. 依頼するOpt Out申請のボリューム、依頼内容のチェックの要否によって変動しますが私が調べた範囲では10€~200€/1欧州特許が相場のようです。

Q. Opt Outした後にやっぱり専属管轄をUPCに戻すことはできますか?

A. はい。取消手続または侵害訴訟が国内裁判所に提起されていないかぎりOpt Outを取り下げることで管轄を統一特許裁判所に戻すことができます。このOpt Outの取下げはOpt Inと呼ばれます。Opt Inの後は再度Opt Outを申請することはできません。

ソース:Article 83(4) UPCA、Rule 5 Paragraph 10 UPC Rules of Procedure

Q. 特許権が共有の場合、Opt Outは共有権者全員で申請しなければならないですか?

A. はい。Opt Outは共有権者全員で申請しなければなりません。

ソース:Rule 5.1 (a) RoP

Q. 最近会社の住所変更をしたのですが、過去の欧州特許については古い住所のままとなっています。古い住所のままでOpt Out申請しても問題ないですか?

A. これについては公式な情報はりません。しかし私が聞いた限り全ての欧州代理人そしてOpt Out代行業者は古い住所のままでOpt Out申請しても問題ないとの立場をとっています。

Q. 特許権が共有の場合でも欧州代理人がOpt Outを申請する場合は、欧州代理人1人でOpt Outを申請できますか?

A. はい。欧州代理人が代理する場合は、特許権が共有の場合でも欧州代理人1人でOpt Outを申請できます。

ソース:Rule 5.3 RoP

Q. 特許権が共有の場合、Opt Out申請に際に共有権者全員の同意書や宣言書のようなものは必要になりますか?

A. いいえ。規則上そのような同意書や宣言書の提出は求められていません。しかしOpt Outの有効性が疑問視される場合を考慮して予め共有権者の同意書を準備しておくことが好ましいです。

ソース:Rule 5.3 RoP

Q. Opt Outの効果は経過期間終了後も持続しますか?

A. 多くの資料では Opt Outの効果はOpt Outが取り下げられない限り経過期間終了後も持続するとされています。しかしOpt Outの効果が経過期間終了後も持続するか否かは実は定かではありません。

ソース:https://hasegawa-ip.com/ep-patent/optout-duration/

Q. Opt Outの効果はSPC(特許権の延長登録)にも及びますか?

A. はい。Opt Outの効果は対象となる欧州特許に基づくSPC(特許権の延長登録)にも及びます。

ソース:Rule 5.2 (a) RoP

Q. Opt Out申請の後にSPCが登録されたとしてもですか?

A. はい。この場合もOpt Outの効果は対象となる欧州特許に基づくSPC(特許権の延長登録)にも及びます。

ソース:Rule 5.2 (b) RoP

Q. Opt Outはいつから申請できますか?

A. Sunrise periodと呼ばれるUPC協定発効3月前、つまり2023年3月1日からOpt Outを申請することができます。

ソース:https://www.unified-patent-court.org/en/news/practical-information-upcoming-launch-sunrise-period

Q. Sunrise periodを過ぎるとOPT OUTは出来ないと言うことですか?

A. いいえ。サンライズ期間はあくまでOpt Out申請の受理が開始される期間です。サンライズ期間の修了後であってもUPCに訴訟が提起されていない限りOpt Out申請は可能です。

ソース:UPC協定83条(3)

Q. Opt Outの申請には代理人が必要ですか?

A. いいえ。Opt Outの申請は特許権者、出願人自身でもでき、代理人は必要ありません(Article 83(4) UPCA)。また委任状があれば無資格者であってもOpt Outの申請を代理することができます(Rule 5(3)UPC Rules of Procedure )。

Q. 委任状無しでOpt Out申請を出来るのは誰ですか?

A. UPC協定の参加加盟国の弁護士は委任状無しでOpt Out申請が出来ます。さらに欧州特許弁理士であって特定の追加資格を有する者も委任状無しでOpt Out申請が出来ます(Rule 5(3)UPC Rules of Procedure、UPC協定48条)。

Q. Opt Outはどうやって申請しますか?

A. UPCのCase Management System (CMS)とよばれるプラットフォームから申請することができます。

Q. CMSへのログインには電子ID証明が必要ですか?

A. はい。詳しくは過去の記事「UPCでのOpt Out申請に電子IDが必要になります」をご参照ください。

Q. 権限の無い第三者でもOpt Outができてしまうって本当ですか?

A. はい。本当です。詳しくは過去の記事「UPCでのOpt Out申請は権限の無い第三者でもできてしまいます」をご参照ください。

Q. Opt Outされた欧州特許は公開されますか?申請者は把握できるのでしょうか?

A. はい。UPCのウェブサイトで公開されます。

ソース:https://www.epo.org/law-practice/unitary/upc/upc-faq.html

Q. Opt Outしない場合、侵害訴訟を国内裁判所およびUPCで並行して提起することは可能ですか?

A. いいえ。EU Regulation 1215/2012、71c 条(2)の規定により同一の主題に関するUPCと国内裁判所における並行手続きが防止されています。一方で、例えばドイツで侵害訴訟を提起して、ドイツ以外の侵害についての訴訟をUPCで提起することは可能と言われています。

ソース:The jurisdiction of European courts in patent disputes

Q. Opt Outしない場合、侵害訴訟は国内裁判所、取消訴訟はUPCが管轄するということはあり得ますか?

A. はい。侵害訴訟と取消訴訟とは同一の主題に関する手続きで無いのでEU Regulation 1215/2012、71c 条(2)の適用を受けません。

ソース:The jurisdiction of European courts in patent disputes para. 45

Q. Opt Outして各国裁判所で裁判をした場合、各国の国内法が適用されるとの理解でよいですか?

A. 実はOpt Outがされた場合に果たして各国裁判所が本当に各国の国内法を適用できるかはまだ公式に決定していません。過去の記事「Opt Outをしたからといって各国の国内法が適用されるとは限りません」をご参照ください。

Q. どんな欧州特許についてOpt Outを申請すべきですか?

A. 移行国(有効化した国)が多く、取消訴訟が提起されるリスクの高い欧州特許についてはセントラルアタックの弊害が大きいのでOpt Outを申請した方が好ましいです。

Q. Opt Outをしないメリットはありますか?

A. Opt OutをしないメリットはUPCで侵害訴訟を提起できるということです。UPCでの審査の質は確かに未知ですが、早い審査、証拠保全制度、仮差止制度など権利者にとって有利が制度が設けられています。したがって積極的に権利行使をしたい、しかし権利行使がしにくい国(例えばイタリア、ベルギー)にしか権利を有していないということであればむしろOpt Outをしない方が好ましいかもしれません。

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