PCT出願の英訳明細書には段落番号を付けたほうがよいです

PCT出願の和文明細書を作成する際にはWIPO指定の共通出願様式により通常段落番号を付します。しかしPCT出願の各国移行の際に必要になる翻訳文(英文)ではこの段落番号を付す必要がありません。このため各国移行時には段落番号が付されていない翻訳文が提出されることがあります。

しかし以下の2つの理由からPCT出願の英文明細書にも段落番号を付すことをお勧めします。

1.記載箇所を特定しやすい

英文明細書にも段落番号が付されていると、和文明細書の記載箇所と英文明細書の記載箇所とを対応させることが容易です。

このため例えば現地代理人にクレーム補正の根拠を説明しなければならない場合、英文明細書にも段落番号が付されていると、和文明細書において補正の根拠となる記載箇所に対応する英文明細書の記載箇所をすぐに特定することができます。また現地代理人に対しては「クレーム補正の根拠は明細書段落[00XX]である」とだけ説明すれば十分な場合がほとんどになるので指示書の作成も楽です。

一方で英文明細書に段落番号が付されていない場合は、和文明細書において補正の根拠となる記載箇所に対応する英文明細書の記載箇所を特定するのに手間がかかります。さらに現地代理人に対する補正の根拠を説明では「クレーム補正の根拠は明細書XXページ、XX~XX行である」とページだけでなく行も特定しなければならないので指示書作成の労力も増えます。

2.各国移行時に事故が起こりにくい

ほとんどの現地代理人は和文PCT出願書面を読むことはできません。このため日本から国内移行の指示と共に送られてきた英文書面が本当に和文PCT出願書面と対応しているかを確かめる術がありません。

したがって仮に誤って別案件の英文書面を送ってしまった場合には、そのままその誤った英文書面が国内移行時に提出されてしまい気づいた時には時すでに遅しということがあります。

一方で英文明細書に段落番号が付されている場合は、現地代理人は少なくとも和文明細書の段落番号と英文書面の段落番号とが一致しているかをチェックすることができます。そしてその段落番号が一致していない場合は和文PCT出願書面と送られてきた英文書面とが対応していない可能性に気づくことが出来ます。

したがって仮に誤って別案件の英文書面を送ってしまった場合であっても移行手続前にその誤りを修正できるチャンスが増えます。

まとめ

上述のように英文明細書にも段落番号を付すことで中間対応時の手間だけでなく事故のリスクも減らせます。したがってPCT出願書面の英訳を作成する際には英文明細書に段落番号を付すことをお勧めします。

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