ドイツ特許庁から単一性を指摘されたら注意が必要です

ドイツ特許庁が単一性を指摘してくることはどちらかと言うと稀です。ドイツ特許庁の審査基準では単一性がないことが明らかな場合であっても課題の共通性がある場合などは単一性の指摘を避けるべき旨が規定されています(Richtlinien für die Prüfung von Patentanmeldungen 1.7)。このため普段の実務でドイツ特許庁からの単一性の指摘に触れることはあまりありません。

しかし一旦ドイツ特許庁から単一性を指摘するOAが発行された場合は注意が必要です。なぜなら単一性の指摘は解消する手段が限られているだけでなく、手段を誤ると不可逆的な不利益を被ることがあるからです。

より具体的にはドイツ特許庁からのOAで単一性が指摘された場合、それを解消する手段は原則以下の2つしかありません(Richtlinien für die Prüfung von Patentanmeldungen 2.3.3.4)。

 1.単一性がない部分を放棄する

 2.単一性がない部分を分離(Ausscheidung)する

ここで「分離(Ausscheidung)」とは単一性を指摘するOAで指定された期間内に義務的に行う分割を意味し、出願係属時にいつでも行うことができる自発的分割(Teilung)とは別の名称が用いられています。

つまり欧州特許庁のように補正によって単一性を確保したり、意見書によって単一性があることを主張したりすることで単一性の指摘を解消することは少なくともドイツ特許庁が提示する選択肢としては認められていません(過去の記事「部分ESRの対応とその後のシナリオ」を参照)。

例えばドイツ特許庁によって出願が単一性のない発明Aと発明Bとを含むと判断された場合の対応フローは以下のようになります。

上記フローチャートからもわかるように単一性の不備を指摘するOAで指定された期間内にその単一性がない部分である発明Bを分離(Ausscheidung)しなかった場合、その発明Bを放棄するしかないので、以後の手続きで発明Bを復活させることができません。また放棄された発明Bはその後に自発的分割(Teilung)の対象とすることもできません。つまり分離(Ausscheidung)しなかった部分の権利化は不可能となります。

従って、単一性が無い部分の権利化を希望する可能性がある場合は、OAで指定された期間内にその部分を分離(Ausscheidung)しておくことをお勧めします。

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