欧州向け出願のクレームには符号を付したほうが良いです

日本の実務では例えば「固定手段(13,14)」のようにクレームに図面で用いられる符号を付すということは一般的ではありません。一方で欧州ではクレームに符号を付すのが一般的です。この実務の根拠となるのがEPC規則43条(7)です。

EPC規則43条(7):

Where the European patent application contains drawings including reference signs, the technical features specified in the claims shall preferably be followed by such reference signs relating to these features, placed in parentheses, if the intelligibility of the claim can thereby be increased. These reference signs shall not be construed as limiting the claim

欧州特許出願が引用符号を含む図面を含んでいる場合において、クレームの理解の助けとなるときは、クレームに記載する技術的特徴には、それらの特徴に関する当該引用符号を括弧に入れて続けることが望ましい。これらの引用符号はクレームを限定するものとは解釈しない。

EPC規則43条(7)では符号を付すことが「望ましい」とされていますが、実際はほぼ確実に審査官から符号をクレームに追加することを要求されます。この符号をクレームに入れる作業はもちろん欧州代理人に任せることが出来ますが、日本からの出願の場合欧州代理人自身が明細書を作成したわけではないのでクレームのどの特徴がどの符号に対応しているかを把握することに時間がかかってしまいます。このため欧州代理人に付号をクレームに入れる作業を任せると、欧州代理人の作業時間が増え代理人費用が嵩みます。

したがってこのクレームに符号に入れるという作業は日本側で行うことがコストの観点から効率的です。より具体的には欧州代理人に出願または移行の依頼をする時点で、符号が付されたクレームを準備しておくことが望ましいです。

「クレームに符号を入れてしまうと権利範囲が符号の実施形態に限定されてしまうんじゃないの」と懸念される方も居ますが、EPC規則43条(7)でもEPC加盟国の判例でも引用符号はクレームを限定しないとしています(例えばドイツ連邦裁判所 X ZR 17/02)。

また実施形態が複数あり、1つの特徴に対して複数の符号がある場合は最も重要な実施形態の符号のみをクレームに付せば十分です(ガイドライン F-IV, 4.18)。

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