上位概念を下位概念に減縮する補正が権利範囲を拡大させることがあります

通常、上位概念を下位概念に減縮する場合は権利範囲が縮小します。例えば金属→鉄や固定手段→ネジのように減縮する補正をした場合は権利範囲が縮小します。

しかし特に化学系の分野ではこのような上位概念を下位概念に変更する補正が権利範囲を拡大することがあります。特に濃度や数値範囲と成分とが組み合わされているときに権利範囲拡大のリスクが生じやすくなります。

例えば、
原クレーム1:A、Bそしてアルコールを10~30wt% 含む組成物。
原クレーム2:前記アルコールはメタノール、エタノール、プロパノールおよびこれらの組合せからなる群から選択されるクレーム1に記載の組成物。
といったクレームを以下のように補正したとします。

補正後のクレーム1:A、Bそしてプロパノールを10~30wt% 含む組成物。

この場合、補正後のクレーム1では原クレーム1の「アルコール」が原クレーム2に基づいて確かに下位概念である「プロノール」に補正されています。

しかしこの場合、補正後のクレーム1は30wt%のプロパノールに加えて、さらにメタノールまたはエタノールを含む形態を含みます。つまりアルコールを30wt%超含む組成物という原クレーム1の権利範囲には属さなかった形態が補正後のクレーム1に含まれることになります。したがってこのような補正は権利範囲を拡大するとしてEPC123条(3)の規定により許されないことがあります(例 T 2017/07、T 172/07、T 9/10など)。

ではどのようにすれば権利範囲拡大の指摘を回避できるのでしょうか?
1つの回避策としてはクレームの文言を忠実に再現する補正が考えられます。

例えば上記例の場合は、クレーム1を

A、Bそしてアルコールを10~30wt% 含み、前記アルコールはプロパノールである組成物。

というふうに補正すれば、アルコールを30wt%超含む組成物が補正後のクレーム1の権利範囲に含まれることが無くなり、権利範囲の拡大となりません。

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