以前の記事「技術的とは?数学的方法・人工知能編」ではソフトウェア関連発明のうち数学的方法または人工知能の分野に絞って、どんな特徴が欧州特許庁では技術的と判断され、進歩性の判断の際に考慮されるについて解説しました。
今回はデータに絞って、どんな特徴が技術的と判断されるかについて解説します。
データには、デバイスの動作を制御するための機能的データ(Functional data)と、ユーザである人間に認知されるための認知的データ(Cognitive data)とがあります。
例えばヘッダと本文とを含む電子メールでは、ヘッダ内のデータは受信メッセージシステムを制御するためのコマンドを含むので機能的データです。一方で本文は受信者に認知されるためのデータなので認知的データです。
欧州特許庁は機能的データ(Functional data)には技術性を認めますが、認知的データ(Cognitive data)には技術性を認めません。このため先行技術文献との差異が認知的データ(Cognitive data)のみの場合は進歩性が認められないことになります。
以下に機能的データおよび認知的データの例を紹介します。
機能的データ(技術的)
・メールのヘッダ
・画像をデコードしてアクセスする方法をシステムに指示するライン番号とアドレスで定義されたデータ構造(T1194/97)。
・データベース検索用インデックス構造(T1351/04)
・クリップボードフォーマット(T0424/03)
・メモリアドレス(T0313/10)
・クエリ最適化に使用されるデータ構造(T0697/17)
認知データ(非技術的)
・メールの本文
・人物または風景の画像データ
・音声データ
・金額、クーポン番号(T1863/14)
・POSデータ(T1031/14)
参考資料
・欧州特許庁ガイドライン G-II, 3.6.3
・ソフトウェア関連発明がEPOで越えなければならない2つのハードル
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