ドイツにおける間接侵害は、ドイツ特許法第10条によって規定されています。日本の特許法第101条に相当するこの条文は、直接の侵害行為が発生する前段階で特許権者を保護することを目的としています。以下にドイツにおける間接侵害の成立要件そして日本の制度との相違点を説明します。
I. 間接侵害の成立要件
ドイツ間接侵害の成立には、客観的要件と主観的要件の両方を満たす必要があります。また直接侵害行為の存在は要件ではありません(過去の記事「ドイツでは間接侵害の解釈において独立説が採用されます」をご参照ください)
1.客観的要件
① ドイツ国内での手段の提供(Anbieten)または供給(Liefern)であること
禁止行為は「提供」と「供給」の二種類に限定されます。日本法第101条が禁止する「生産」や「輸入」はドイツの間接侵害の対象となっていない点に注意が必要です。
② 手段が発明の本質的要素に係るものであること
「手段」は、クレームの一つ以上の構成要件と機能的に協働し、保護された技術的教示の実施に寄与する能力を有するものと定義されます(BGH GRUR 2005, 848)。また、クレームに記載されている構成要件は、それがプレアンブル(前置部)であれ特徴部分であれ、**クレームに存在するという理由だけで原則として発明の本質的要素とみなされます**(BGH GRUR 2004, 758 – Flügelradzähler)。なお、有体物(気体・液体を含む)であることが支配的解釈であり、プログラム等の無体物が「手段」に該当するかは、現時点ではBGHレベルでは否定的です(BGH X ZR 33/10)。
③ 手段が実施に適していること
発明の実施に用いることが「可能」であれば足り、侵害的用途と非侵害的用途の双方に使用できる場合も要件を満たします(BGH GRUR 2007, 679 – Haubenstretchautomat)。取扱説明書等に侵害的使用の示唆がなくても該当し得ます。
④ 権限のない者への提供であること
ライセンス契約者、先使用権者、権利消尽後の正当な修理目的の受領者などは「権限を有する者」に該当し、これらの者への提供は間接侵害を構成しません。
⑤ 特許権者の同意がないこと
同意は黙示的に与えられることもあります。特許権者自らが自己の特許に係る方法の実施に適した手段を市場に供給した場合、その手段の購入者が発明を実施することについて黙示の同意があると解されます(BGH GRUR 2007, 773)。
⑥ 手段が一般的市販品(Im Handel allgemein erhältliche Erzeugnisse)でないこと
ねじ・ボルト・化学薬品・トランジスタなど、多様な用途に使われ特定の使用目的によって特徴づけられない大量生産品は原則として間接侵害の対象外です。ただし、供給者が受給者に対して故意に直接侵害行為を行わせた場合は例外的に間接侵害が成立します(第10条第2項)。
2.主観的要件
– 受給者側:ドイツ国内での発明の実施のための意図があること、またはそれが状況から明白であること
– 供給者側:手段が発明の実施に適し、かつそのように意図されていることを知っていたこと、またはそれが状況から明白であること
また供給者や受給者が特許権の存在を認識していることは要件ではありません(BGH X ZR 176/98 Luftheizgerät)。取扱説明書が侵害的用途のみを推奨する場合や、手段が技術的・経済的に侵害的用途にしか使用できない場合は、状況から「明白」であると判断されます。
II. 日本法との主要な相違点まとめ
