EPOにおけるシフト補正の制限(EPC規則137(5))

EPC規則137条(5)

補正クレームは,当初にクレームされていた発明又は単一の包括的発明概念を形成する一群の発明と関連していない未調査の主題を対象とすることができず,規則62a又は規則63に従って調査されていない主題を対象とすることもできない。


EPC規則137条(5)は、日本特許法17条の2第4項で規定するシフト補正の制限に対応する規定です。日本では導入当初から物議の的となっている規定ですが、EPOではどのように運用されているのでしょうか。

 

最近のEPO審判部の判決(T2334/11)では、規則137条(5)の適用について、以下のように説明されています。


“規則137条(5)は、クレームされた発明の本質または性質を、特に構成要素の置換えまたは削除によって大幅に変更する場合に適用されうる。....明確性、新規性または進歩性に関する拒絶理由を解消するために、出願当初の明細書に記載された構成要素をクレームに追加する補正は、通常、当初にクレームされていた発明との規則137(5)における単一性を損なわない。”

 

すなわち、特許請求の範囲を狭める補正であれば、通常は、EPOでシフト補正が問題視されることはありません。したがって、EPOにおいては、日本のシフト補正関連で問題となっているような、「審査された必須でない構成要件を削除することができない」といった弊害が生じることはないと思います。

この点でEPOにおけるシフト補正の運用は、JPOのそれよりも穏やかであると言えます。

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