優先権の譲渡証書でよくある不備3つ

以前の記事「基礎よりも出願人を減らす場合は、EP出願後に権利譲渡する方がよいです」で説明しましたが、基礎出願よりも後の欧州特許出願の出願人が少ない場合、欧州特許庁は優先権が移転された証拠として譲渡証書の提出を求めてくる場合があります。この譲渡証書に不備があるとむしろ優先権が無効であることを証明してしまうため、不備の無い譲渡証書を準備することは優先権を確保する上で極めて重要になります。

しかしながら日々の実務で不備のある譲渡証書に触れる機会が驚くほど多くあります。以下に優先権の譲渡証書であるよくある3つの不備を紹介します。

① 譲渡の日付が後の出願後

欧州特許庁は優先権の譲渡の遡及効を認めません(T 0788/05)。つまり欧州特許庁で優先権の主張が認められるには後の欧州特許出願の日前に優先権の譲渡が完了していることが条件となります。優先権の譲渡の日付が後の欧州特許出願後となっている証拠はむしろ優先権が無効であることを証明してしまいます。

このため譲渡証書では譲渡の日付を後の欧州特許出願日前とすべきです。

② 優先権の譲渡が明示されていない

欧州特許庁は発明の持分や出願に関する権利と優先権とを明確に分けています(T0407/14)。このため譲渡の日付が後の欧州特許出願日前であっても譲渡の対象が発明の持分である場合は優先権の移転の証明とはなりません。

このため譲渡証書では譲渡の対象が優先権であることを明示すべきです。

③ 譲渡証に署名した者が会社の代理権を有さない

優先権は先の出願人に帰属します。そして出願人は会社である場合がほとんどです。したがって優先権の譲渡契約を締結できるのは原則会社の代理権を有する取締役(会社法349条)になります。にも関わらず知的財産部や法務部の部長によって署名されている譲渡証書を見ることがあります。このような譲渡証書は署名をした部長が署名時に会社の代理権を有していたことを証明できなければ優先権の移転の証拠とはなりません(ガイドライン E-XIV, 3)。

このため譲渡証書は会社の代理権を有する者によって署名されるべきです。

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