欧州の拡大先願(EPC54条(3))における加盟国国内出願の取り扱い

欧州におけるいわゆる拡大先願(EPC54条(3))の適用は先の出願もEP出願である場合にのみ適用されます(過去記事参照)。

 したがって、例えばEP出願のクレーム内容が、EP出願の日前にされた出願であってEP出願の日後に公開されたドイツ出願があっても、EPOの審査では考慮されません。

 しかし、このドイツ出願には注意を払う必要があります。

 なぜならこのEP出願にかかる特許がドイツでValidationされた場合、上述したドイツ出願が拡大先願における先の出願として認められ、EP特許のドイツ部分が無効となる恐れがあるからです。

 このドイツ出願がEP特許のドイツ部分に対して拡大先願(EPC54条(3))における先の出願を構成することは、以下のEPC138条(1)、(2)およびEPC139条(2)から読み取ることができます。

EPC138条
(1) 第139条に従うことを条件として,欧州特許は,次の事由に基づいてのみ,締約国の領域にわたる効力をもって取り消すことができる。
(a) 欧州特許の対象が第52条から第57条までに基づいて特許を受けることができないこと

EPC139条(2)
 締約国における国内特許出願及び国内特許は,当該締約国を指定している欧州特許に関して,欧州特許が国内特許であるものとして同一の先の権利としての効力を有する。

 上記説明ではドイツを例として取り上げましたが、他のEPC加盟国の国内出願も同様に取り扱われます。

 したがって、EP出願の審査段階で先の出願となりうるEPC加盟国の国内出願を既にご存知の場合、EP出願の指定国から当該加盟国を除外するか、または当該加盟国については、先の出願を回避するようなクレームを提出する等の措置をとることをお勧めします。

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