EPOにおける数値範囲の新規性②

以前の記事「EPOにおける数値範囲の新規性」で数値範囲の選択発明はガイドライン上以下の3つの要件を満たせは新規性が認められると説明しました。
a)選択された数値範囲が、引用例の数値範囲よりも狭いこと
b)選択された数値範囲が、引用例に具体的に開示された実施例の数値および引用例の数値範囲の上限または下限から充分に離れていること
c)選択された数値範囲が、先行技術の任意の範囲でなく、異なる発明であること(例えば選択された範囲で異なる効果があること)
当該3つの要件は現在でもガイドラインに定められています(GL G-VI, 8)。
しかしながら近年の欧州特許庁の審判部の判決では上記c)の要件は、新規性ではなく進歩性の要件として取り扱われることが主流です。このため近年の欧州特許庁の審判部の判決では上記c)の要件は新規性判断の際には考慮されないことが多いです(T40/11、T1948/10、T378/12)。
したがって上記c)の要件に基づいて選択発明の新規性が否定された場合は上記判例を引用して反論を試みることをお勧めします。
特にEPC54(3)条の文献(日本でいう29条の2の文献)やClosest Prior Artとして適さない文献が引用されている場合は、新規性さえクリアできれば進歩性で問題となることはありません。このため上記c)が新規性の要件か又は進歩性の要件かは重要な問題であると言えます。

 

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