口頭審理に強いAttorneyに共通する5つの特徴

日本ではあまり馴染みがありませんが欧州ではよくアトーニーおよび出願人が特許庁に赴いて口頭審理に参加します。特に異議申立はほとんどの場合において口頭審理で勝敗が決着します。書面第一主義の日本では「口頭審理なんて結論ありきで誰が参加しても同じだろ」と思われる方々が多いかもしれませんが、欧州での口頭審理の勝率はアトーニーによって大きく異なります。すなわち欧州における口頭審理は決して結論ありきのものではなく、アトーニーの腕が結果に大きな影響を及ぼします。

以下私が見てきた中で感じた口頭審理に強いアトーニーに共通する5つの特徴についてまとめてみました。

1.準備万全

本当によく準備しています。これまでの書面審査であまり重要視されていなかった引用文献にも隅から隅まで目を通して内容を把握しています。また議論の対象になりそうな判例および審査基準についても予習します。このためいかなる側面からの議論であっても即座に対応することができます。

2.審査基準、判例に精通

審査基準、判例に精通していて、審査基準の該当ページや判例の番号まで把握しています。審査基準の該当ページや判例の番号を諳んじて理論をサポートすると、それはそれは説得力があります。

3.アドリブに強い

欧州の口頭審理では往々にして議論が想定外の方向に進むことがあります。むしろ予測通りに議論が進むことの方がまれです。しかしそうのような想定外の場面に陥っても、瞬時に理論を組み直し、ロジックの通った主張を展開することができます。

4.相手を揺さぶるのが上手い

相手側を心理的に揺さぶるのが上手です。より具体的には口頭審理中に相手の論点の弱点を徹底的に突いたり、規則に反しない範囲で挑発したり、休憩時間に相手が頭を休めたがっているのを見計らってあえて話しかけたりすることで冷静さを失わせミスを誘発させるのが上手です。

5.相手に揺さぶられない

一方で自身は相手に極めて冷静です。相手に揺さぶりに対しても動かざること山のごとしで淡々と自らの主張を展開することができます。

まとめ

まとめると口頭審理に強いアトーニーというのは、①準備を怠らず、②日々の勉強により審査基準および判例に精通し、③不測の事態にも臨機応変に対応することができ、④相手を揺さぶる狡猾さを有する一方で、⑤自身は極めて冷静沈着といった人物でしょうか。上記特徴のうち1および2については才能および経験が無くとも努力でカバーできると思いますが、3~5の特徴についてはよほどの才能か、経験が無ければ身に着けることは困難だと思います。

腕の良いアトーニーは古美門研介ばり完全に口頭審理の場を支配し、案件をエレガントに勝利に導きます。このような口頭審理に参加させてもらうとまるで心地の良いオーケストラの演奏を聴いているような感じになります。

私の場合、10年、20年時間を費やしたとしてもこの境地にたどり着けるかは疑問ですが、私が目指したいアトーニー像の1つです。

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