G1/15により新たに部分優先が認められるようになった例

先日の「Poisonous Divisionalは解毒された?続報」でも説明しましたが2017年2月1日に判決文が公開された拡大審判部の判決G1/15によりこれまで採用されていたG2/98に基づく部分優先の判断基準が緩和されました。

以下に以前のG2/98の判断基準では部分優先が認められなかったが、G1/15の判断基準では部分優先が認められる3つの例を紹介します。

例① 一般化型

  基礎出願:鉄(Fe)からなる基版を有する積層体。
  優先権主張を伴う出願:金属からなる基版を有する積層体。

解説:
以前のG2/98の判断基準では、基礎出願に記載された「鉄」は優先権主張を伴う出願のクレームに含まれているものの「限定数の明確に定義された選択的主題」に該当せず「鉄」について部分優先が認められませんでした。このため以前は優先期間中に「鉄からなる基版を有する積層体」が公開されれば新規性が否定されていました。

しかしG1/15が示す新たな基準では主題が「限定数の明確に定義された選択的主題に該当するか否か」は部分優先を判断する際の要件ではなくなりましたので、「鉄」について部分優先が認められます。このため優先期間中に「鉄からなる基版を有する積層体」が公開されても新規性は否定されません。


例② 数値範囲型

  基礎出願:化合物Xを2~5w%含む組成物。
  優先権主張を伴う出願:化合物Xを1~6w%含む組成物。

解説:
以前のG2/98の判断基準では、基礎出願に記載された「2~5w%」は優先権主張を伴う出願のクレームに含まれているものの「限定数の明確に定義された選択的主題」に該当せず「2~5w%」について部分優先が認められませんでした。このため優先期間中に例えば「化合物Xを3w%含む組成物」が公開されれば新規性が否定されていました。

しかしG1/15が示す新たな基準では「2~5w%」について部分優先が認められます。このため優先期間中に「化合物Xを3w%含む組成物」が公開されても新規性は否定されません。

例③ 構成要件削除型

  基礎出願:光学レンズとエンボス加工されたセキュリティ部とを含む有価証券。
  優先権主張を伴う出願:光学レンズとセキュリティ部とを含む有価証券。

解説:
例①および例②のように本例でもG1/15が示す新たな基準では「エンボス加工されたセキュリティ部」について部分優先が認められます。このため優先期間中に「光学レンズとエンボス加工されたセキュリティ部とを含む有価証券」が公開されても新規性は否定されません。

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