色々と紆余曲折はあったものの欧州単一特許制度は2017年の12月ごろには発効するであろうと言われています。
欧州単一特許制度が発効した後は、欧州特許庁での特許査定後に特許権者は、各移行国の特許の束であるこれまでの欧州特許か、EU25ヶ国内で一括して有効な欧州単一効特許(Unitary Patent)かを選択することができるようになります。
ここで問題になるのが一体どのような判断基準で通常の欧州特許にするか、欧州単一効特許にするかを選択すべきかということです。
まずは欧州単一効特許のメリット、デメリットを考えてみます。
欧州単一効特許のメリットとされているのがコストです。欧州単一効特許は、通常の欧州特許をEU25ヶ国に移行することと比較してコストを80%も削減することができると言われています。すなわち移行したい国が多いほどコスト削減のメリットを享受することができます。
一方で欧州単一効特許のデメリットとされているのがEU25ヶ国という広範囲に効力を有する特許が一発で取消になるセントラルアタックのリスクです。このセントラルアタックのリスクは特許の価値(例えば1つの特許による売上)が高くなればなるほど顕著になります。
そこで横軸に移行したい国の数、縦軸に特許の価値をとった以下のチャートを基にどのような特許が欧州単一効特許に適しているか考えてみました。
まず、移行したい国が少ない特許はそもそもコスト上のメリットがないので、欧州単一効特許を選択するメリットがありません。このため第1群、第2群の特許は欧州単一効特許に適していません。
一方で、移行したい国が多く、特許の価値が高い第3群の特許の場合は、確かにコスト上のメリットはあるもののセントラルアタックのリスクが高すぎ、メリットとのバランスが取れていません。例えば第3群特許の代表例である医薬品特許の場合は、特許による1日の売り上げが1億円を超える場合があるので、欧州単一効特許を選択することによって得られるコストのメリットなど誤差程度にしかなりません。このため第3群の特許も欧州単一効特許に適していません。
唯一、移行したい国が多く、特許の価値が低い第4群の特許でのみコストのメリットとセントラルアタックのリスクとのバランスが取れると思います。
結論:
欧州単一効特許は移行したい国が多く、価値が比較的低い特許に適していると思われます。
ただ欧州単一効特許の取消訴訟および侵害訴訟を管轄する統一特許裁判所(Unified Patent Court)がものすごいプロパテントで、取消訴訟での特許無効率がものすごく低く、侵害訴訟での権利者勝訴率がものすごい高かった場合は事情が変わってきます。ですので制度の今後の進展を見守りたいです。
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