欧州特許庁における審判(Appeal)の概要をまとめてみました。
審判手続の種類
・査定系(ex parte)手続き (審査部の決定に対する審判)
・当事者系(inter partes)手続き (異議部の決定に対する審判)
・日本特許庁の無効審判に対応する手続きはない
審判の目的
・第一審の決定の正しさについて判断を下すこと(G9/91)
・第一審の審査を続行することが目的ではない
審査方式
・書面審査+口頭審理
審理部(Boards of Appeal)の構成
・2名の技術構成員及び1名の法律構成員からなる合議体、または
・3名の技術構成員及び2名の法律構成員からなる合議体(EPC21条)
庁費用
・2705ユーロ
・中小企業、個人、NPOの場合は減額あり(EPC規則6条(4))
代理人費用
・10,000~40,000ユーロ
審判請求人適格
・決定によって不利な影響を受けた手続に関与した当事者(EPC107条)
・査定系:
拒絶査定または主請求が認められなかった場合の出願人
・当事者系:
特許取消決定 → 特許権者のみ
異議却下 → 異議申立人のみ
補正された形での維持決定 → 特許権者&異議申立人
請求期間
・審判請求の対象となる決定の通知の日から2月以内
・決定の通知の日から4月以内に審判理由を記載した書面を提出(EPC108条)
審判の対象
・審査部による拒絶査定または主請求を認めない決定
・異議部による特許取消決定または特許維持決定(EPC106条)
審判手続きのフロー
請求の取下げ
・可
・取下げ後は職権での手続続行はなし(G7/91、G8/91)
・請求を取下げた時点で審査部または異議部の決定が確定する
手続の促進
・可
・例えば侵害訴訟が係属中または予想される場合、ライセンス対象の特許に関する場合などは審判部の裁量により手続が促進されうる(OJ 2008, 220)
審決
・査定系審判の審決:
請求却下
特許査定
差し戻し
・当事者系審判の審決:
請求却下
査定された形での特許維持
補正された形での特許維持
特許取消
差し戻し
審決に対する不服申立
一定条件を満たせば再審が認められることがあるが(EPC112a条)、通常審決に対する不服申立手段は無い。つまり欧州特許庁では審判が最終審。
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