欧州向け出願ではクレーム数を多くしたほうがよいです

日本からの欧州特許出願の中にはクレーム数が例えば2~5程度と少ない出願が散見されます。しかし出願時のクレーム数が少ないことは以下の2つの理由から欧州では好ましくありません。

1.拒絶理由が小出しにされる

欧州特許庁の調査部門は独立クレームおよび従属クレームの特徴を調査することが義務付けられています(ガイドラインB-III, 3.7)。一方で明細書のみに記載されされている特徴については調査することが義務付けられていません(T1679/10)。

このため例えば出願が1つの独立クレームしか含まない場合は:

  第1OAで文献1が引用され新規性が否定される
  ↓
  明細書から特徴Aを追加して文献1に対して新規性を確保
  ↓
  特徴Aについて審査部が追加で調査をし新たな文献2を発見。第2OAで文献2が引用され新規性が否定される
  ↓
  明細書から特徴Bを追加して文献2に対して新規性を確保
  ↓
  特徴Bについて審査部が追加で調査をし新たな文献3を発見。第3OAで文献3が引用され新規性が否定される
  ↓
  明細書から特徴Cを追加して文献3に対して新規性を確保
  ↓
  第4OAでようやく特許性が認められる

というように拒絶理由が小出しにされ権利化手続が極めて非経済的になる恐れがあります。

一方、上記例で特徴A、BおよびCに関する従属クレームを予め出願時に準備しておけば最初のOAで特徴Cに特許性がある見解を得られたことになります。

2.補正が制限される

クレームの数が少ない場合、クレームを補正したい場合は上記の例のように明細書に基づいて補正をせざるを得ません。

しかし欧州では明細書からの特徴を追加する補正は常に認められない中間一般化として許可されないリスクを含みます(「中間一般化って何?」というかたはこちらのパテントの記事をご参照下さい)。

一方で従属クレームの内容を独立クレームに追加するだけの補正であれば中間一般化のリスクは通常ありません。

まとめ

上述のように欧州では出願時のクレーム数が少ないことは効率的な権利化の観点から好ましくありません。したがって欧州向けの出願では特許性に寄与しそうな特徴は予め出願時に従属クレームで特定するなどして、クレームの数を多くすることが好ましいです。

一方でクレーム数が16以上になると1クレームごとに235ユーロのクレーム手数料が発生してしまいます。したがってコストパフォーマンスの観点からクレームの数は15以内に抑えることが好ましいです。

つまり欧州向け出願ではクレーム数を10~15程度としておけばコストパフォーマンスよく効率的な権利化が図れます。

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