欧州特許庁はクレーム数が16以上の場合、16クレームから1クレーム毎に275€のクレーム料を要求してきます(Art. 2(1), item 15, RFees)。このため例えばPCT出願のクレーム数が多い場合、欧州移行の際に移行時にクレーム数を減らす補正をすることが好ましいです。しかしながらどうやってクレーム数を減らしたらよいか分からない方も多いかと思います。
以下にクレームされた特徴を実質的に減らすことなくクレーム数だけを減らすテクニックを紹介します。
1. 直列の係属関係にある従属クレーム同士を「optionally」や「preferably」といった接続詞を使って組み合わせる
例1
補正前:
クレーム1:Aを有する装置。
クレーム2:さらにBを有するクレーム1の装置。
クレーム3:さらにCを有するクレーム1または2の装置。
クレーム4:さらにDを有するクレーム1~3のいずれか一項の装置。
クレーム5:さらにEを有するクレーム1~4のいずれか一項の装置。
クレーム2:さらにBを有するクレーム1の装置。
クレーム3:さらにCを有するクレーム1または2の装置。
クレーム4:さらにDを有するクレーム1~3のいずれか一項の装置。
クレーム5:さらにEを有するクレーム1~4のいずれか一項の装置。
補正後:
クレーム1:Aを有する装置。
クレーム2:さらにBと、
optionallyにCと、
optionallyにDと、
optionallyにEと、を有するクレーム1の装置。
クレーム2:さらにBと、
optionallyにCと、
optionallyにDと、
optionallyにEと、を有するクレーム1の装置。
例2
補正前:
クレーム1:Aを含む組成物。
クレーム2:Aの含有量は2~30wt%であるクレーム1の組成物。
クレーム3:Aの含有量は5~25wt%であるクレーム1または2の組成物。
クレーム4:Aの含有量は10~20wt%であるクレーム1~3のいずれか一項の組成物。
クレーム2:Aの含有量は2~30wt%であるクレーム1の組成物。
クレーム3:Aの含有量は5~25wt%であるクレーム1または2の組成物。
クレーム4:Aの含有量は10~20wt%であるクレーム1~3のいずれか一項の組成物。
補正後:
クレーム1:Aを含む組成物。
クレーム2:Aの含有量は2~30wt%であり、
preferably Aの含有量は5~25wt%であり、
more preferably Aの含有量は10~20wt%である、クレーム1の組成物。
クレーム2:Aの含有量は2~30wt%であり、
preferably Aの含有量は5~25wt%であり、
more preferably Aの含有量は10~20wt%である、クレーム1の組成物。
2. 並列の係属関係にある従属クレーム同士を接続詞「or」を使って組み合わせる
補正前:
クレーム1:Aを有する装置。
クレーム2:さらにBを有するクレーム1の装置。
クレーム3:さらにCを有するクレーム1の装置。
クレーム4:さらにDを有するクレーム1の装置。
クレーム2:さらにBを有するクレーム1の装置。
クレーム3:さらにCを有するクレーム1の装置。
クレーム4:さらにDを有するクレーム1の装置。
補正後:
クレーム1:Aを有する装置。
クレーム2:B、C or Dをさらに有するクレーム1の装置。
クレーム2:B、C or Dをさらに有するクレーム1の装置。
まとめ
上で紹介したテクニックを活用することで、実質的にクレームされた特徴を減らすことなくクレーム数だけを減しかなりのクレーム費用を削減することが可能です。一方で独立クレームで「optionally」や「preferably」といった接続詞を用いると欧州特許庁からClarityを指摘されることが多いです。このため「optionally」や「preferably」といった接続詞は従属クレームにおいて活用することをお勧めします。
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