欧州では”Incorporation by Reference”を使えません

米国では他の文献を参照して引用(Incorporation by Reference)することで、明細書の記載が省略ができる場合があります。このため米国での権利化を意識したPCT出願でも他の文献を参照して引用することがよくあります。

しかし欧州での権利化を意識した場合、他の文献を参照した引用に頼ることは以下の理由から危険です。

実施可能要件違反と指摘される

欧州特許庁のガイドラインによれば、発明の必須の特徴に関して、明細書は自己完結(self-contained)していなければならないとされていいます(GL F-III, 8)。すなわち発明の必須の特徴については他の文献の参照が無くとも明細書の記載のみで理解可能でなければなりません。

このため発明の必須の特徴の説明が明細書になく参照された文献のみに記載されている場合は、欧州特許庁では実施可能要件違反と判断されてしまいます。

補正をできないこともある

「もし実施可能要件が指摘されたら、参照された文献の内容を補正で明細書に追加すればよいじゃない」と思われる方もいらっしゃると思いますが、補正による新規事項の追加に厳しい欧州特許庁ではそのような補正は例外的にしか認められません(H-IV, 2.2.1)。

結論

このように欧州ではIncorporation by Referenceに頼ると治癒できない実施可能要件違反を招いてしまう恐れがあります。しがたって欧州での権利化を想定しているPCT出願のドラフトの際には、他の文献を参照した引用に頼らずとも明細書の記載のみから発明を理解できるようにすべきです。

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