EPC規則62a(1)条の通知に対して取りうる3つのオプション

EPC規則43(2)条に基づき欧州では原則1つのカテゴリー(物、方法、使用)に1つの独立クレームしか許されていません。欧州特許出願がこの1カテゴリー/1独立クレームの原則に違反していると欧州特許庁の調査部が判断した場合、調査部は調査報告発行前にどの独立クレームを調査対象として選択するかを出願人に問う通知を発行します(EPC規則62a(1)条の通知)。

このEPC規則62a(1)条の通知が発行された場合、出願人は以下の3つの対応が可能です。

1. 単に調査対象とすべき独立クレームを選択する

出願人は通知に従い素直に調査対象とすべき独立クレームを1つ選択することができます。この場合、欧州特許庁の調査部は選択された独立クレームに基づき欧州調査をします。選択されなかった独立クレームについては分割出願で権利化を図ることができます。

2. 単に反論する

1カテゴリー/1独立クレームの原則はあくまで原則なので例外があります。より具体的にはEPC規則43(2)条により以下の場合には例外的に1のカテゴリーに複数の独立クレームが許されます。

(a) 相互に関連する複数の製品
(b) 製品又は装置の異なる用途
(c) 特定の問題についての代替的解決法。ただし,これらの代替的解決法を単一のクレームに包含させることが適切でない場合に限る。

このため出願人はEPC規則62a(1)条の通知に対して素直に調査対象とすべき独立クレームを選択するオプションに代えて、本件ではEPC規則43(2)条(a)~(c)に基づき1カテゴリーに複数の独立クレームが許されるべきだと反論することができます。調査部が当該反論を妥当と判断した場合は1カテゴリーに複数の独立クレームが許され、複数の独立クレームに基づき欧州調査がなされます。一方で調査部が当該反論を失当と判断した場合は最初の独立クレームのみに基づき欧州調査がなされます。ただし仮に調査部が当該反論を失当と判断した場合であったとしても、まだ調査段階後の審査段階でまだ反論の機会があります。

3. 主請求で反論し、補請求で独立クレームを選択する

出願人は主請求で本件ではEPC規則43(2)条(a)~(c)に基づき1カテゴリーに複数の独立クレームが許されるべきだと反論し、補請求として調査対象とすべき独立クレームを1つ選択することができます。単に反論するオプションでは調査部が反論を失当と判断した場合、強制的に最初の独立クレームに基づき欧州調査がなされるのに対し、このオプションでは調査部が反論を失当と判断した場合に調査の対象となる独立クレームを選択できるというメリットがあります。また単に反論するオプションと同様に仮に調査部が主請求としての反論を失当と判断した場合であったとしても、審査段階でまだ反論の機会があります。

まとめ

上述のようにEPC規則62a(1)条の通知には単に単に調査対象とすべき独立クレームを選択するだけでなく、反論等の他のオプションがあります。したがってEPC規則62a(1)条の通知が発行された場合はどのようなオプションを採用すべきか検討することをお勧めします。

ソース:
https://www.epo.org/en/legal/guidelines-epc/2024/b_viii_4_2_2.html

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