日本では先行技術文献に記載された選択肢の一部を発明特定事項として選択した発明であっても、異質または同質であっても際立って優れた効果を有する場合は選択発明として新規性および進歩性が認められることがあります。
欧州でも先行技術文献に記載された選択肢の一部を発明特定事項として選択した発明であっても選択発明として特許性が認められることがあります。
しかし日本と異なり欧州では選択発明としての新規性が認められるには複数のリストからの選択であることが要件となります(EPOガイドライン G-VI, 8)。以下に例を用いて欧州において選択発明として新規性が認められる場合と認められない場合とについて説明します。
1つのリストからの選択の例(新規性が認められない例)
本発明:
化合物Aと化合物b4とを含む組成物。
引用例:
化合物Aと、
化合物b1、化合物b2、化合物b3、化合物b4および化合物b5からなる群から選択される化合物Bとを含む組成物。
この場合、日本では化合物b4に引用例から示唆されい異質な効果、又は同質であるが際立って優れた効果があることを示す実験データなどが明細書にある場合、選択発明として新規性および進歩性が認められます。つまり「化合物b1、化合物b2、化合物b3、化合物b4および化合物b5」という1つのリストからの選択であっても選択発明として新規性および進歩性が認められます。
一方で欧州では1つのリストからの選択である場合は、化合物b4にどんなに優れた効果があったとしても一律で新規性が認められません(EPOガイドライン G-VI, 8)。
2つのリストからの選択の例(新規性が認められる例)
本発明:
化合物a3と化合物b4とを含む組成物。
引用例:
化合物a1、化合物a2、化合物a3、化合物a4および化合物a5からなる群から選択される化合物Aと、
化合物b1、化合物b2、化合物b3、化合物b4および化合物b5からなる群から選択される化合物Bとを含む組成物。
この場合、引用例から本発明に到達するには「化合物a1、化合物a2、化合物a3、化合物a4および化合物a5」というリストと「化合物b1、化合物b2、化合物b3、化合物b4および化合物b5」というリストとからの選択が必要になります。すなわち2つのリストからの選択が必要になります。
2つのリストからの選択が必要であれば、欧州では仮に化合物a3と化合物b4との組合せに有利な効果が無かったとしても一律に新規性が認められます(ただし有利な効果がない場合は進歩性が認められない可能性が高いです)。
まとめ
このように欧州では選択発明として特許性を確保するためには最低でも2つのリストからの選択であることが必要になります。
一方で1つのリストからの選択でしかない場合はどれだけ有利な効果を主張したところで新規性が認められることはありません。したがって1つのリストからの選択でしかない場合は、別の構成を付与する等によって新規性を確保する必要があります。
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