EPOでのクレームの独・仏訳は機械翻訳でも問題ありません

欧州特許庁での手続き言語が英語の場合、EPC規則71条(3)の通知に対する応答の際には許可予定クレームの独訳および仏訳を提出することが求められます(EPC規則71条(3)の通知って何?という方は過去の記事「EPC規則71(3)の通知は特許査定ではありません」をご参照下さい)。

このクレームの独訳および仏訳は通常欧州代理人が人力で翻訳したものが提出されます。このためクレームの文字数が多い場合はこのクレームの翻訳費用もバカになりません。

一方でドイツおよびフランスにおける侵害訴訟または取消手続の際に正文となるのはEPC70条(1)に従い手続言語(英語)による欧州特許です。

すなわちEPC規則71条(3)の応答の際に提出するクレームの独訳および仏訳はドイツおよびフランスにおいて権利範囲の解釈に参照されません。このためEPC規則71条(3)の応答の際に提出するクレームの独訳および仏訳は不正確であったとしても実質的なデメリットなく、この独訳および仏訳をグーグル翻訳のような機械翻訳で作成したとしても後々問題となることはありません。

しかしながら欧州代理人の立場としてはクライアントからの許可なく機械翻訳で作成したクレームの独訳および仏訳をそのまま提出するということは倫理上できません。一方でクライアントからの明示的な指示があれば欧州代理人もクレームの独訳および仏訳を機械翻訳だけで対応すると思います。

したがってこのクレームの独訳および仏訳にかかる費用を抑えたい場合は、欧州代理人に機械翻訳のみで対応すべきことを指示することをお勧めします。

12月15日追記:
仏語および独語を公用語とするルクセンブルグでは、クレームの独・仏訳がEPOでの手続言語の英語のクレームよりも狭い場合、クレームの独・仏訳が正文となります(EPC70条(3))。このためルクセンブルクで欧州特許を有効化させたい場合は、正確な独・仏訳があった方がよいです。機械翻訳だけではリスクが大きいです。

参考条文
Rule 71(3) EPC
Before the Examining Division decides to grant the European patent, it shall inform the applicant of the text in which it intends to grant it and of the related bibliographic data. In this communication the Examining Division shall invite the applicant to pay the fee for grant and publishing and to file a translation of the claims in the two official languages of the European Patent Office other than the language of the proceedings within four months. 

Article 70(1) EPC
The text of a European patent application or a European patent in the language of the proceedings shall be the authentic text in any proceedings before the European Patent Office and in any Contracting State.

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