Poisonous Divisionalは解毒された?

2017年2月3日更新続報を掲載しました

欧州では、優先出願に記載された特徴をより一般化または他の選択肢の追加等により拡張した特徴を含む欧州特許出願を分割した際に、分割出願と原出願との間で自己衝突が生じる「Poisonous Divisional(毒になる分割出願)」という現象がありました。

poisonous divisional

例えば上の図のように基礎出願で厚さ2~5mmの樹脂膜を有する金属板をクレームし、EP出願で数値範囲を拡大して1~6mmの樹脂膜を有する金属板をクレームする一方で、実施例の記載を基礎出願のままとした場合に分割したと考えます。

このような場合、これまで欧州では親出願のクレームには一切優先権が認められず、一方で子出願の実施例の記載には優先権が認められました。このため、子出願の実施例の記載によって親出願のクレームがEPC54条(3)の規定により新規性が否定されるという現象が発生しました。

しかし、これでは出願人にあまりにも酷ということでこの「Poisonous Divisional(毒になる分割出願)」の問題は2015年に欧州特許庁の拡大審判部に付託(G1/15)されました。より本質的には上記のような例の場合に、2~5mmの数値範囲でEPの親出願で部分優先が認められるか否かが拡大審判部により検討されていました。

そしてこの度、拡大審判部が部分優先を認めるとの判断を下しました。

まだ判決の理由が公開されていないため、あまり確実なことは言えないのですが、この判断は「限定数の明確に定義され選択的主題(limited number of clearly defined alternative subject matters)」にしか部分優先をみとめなかった過去の拡大審判部の判決(G2/98)に反します。

そして拡大審判部が部分優先を認めるとの判断したことにより毒になる分割出願の問題も今後発生しなくなるはずです。

いずれにせよ出願人にとっては好ましい判断であったと思います。判決の理由が公開された後にまた続報を載せたいと思います。

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