1.背景
日本ではコロナ禍で審査官が在宅勤務を強いられたことにより審査の生産性が落ち審査が滞っていると聞きます。欧州特許庁でもコロナ禍が審査の生産性に影響を与えたかについて調べてみました。
より具体的には今年の1月~5月の
1)補充欧州調査報告(Supplementary European Search Report)、
2)審査段階における第1Communicationおよび
3)EPC規則71条(3)の通知
の発行数を2019年および2018年のそれと比較してみました。
2.調査に用いたツール
サーチツール:EP Bulletin Search
データベース:BULL2020/29
3.結果
1)補充欧州調査報告(Supplementary European Search Report)の発行数
1月~5月の発行数の合計
2020年:21637件
2019年:20807件
2018年:22256件
2)第1Communicationの発行数
1月~5月の発行数の合計
2020年:45205件
2019年:46329件
2018年:49866件
3)規則71条(3)の通知の発行数
1月~5月の発行数の合計
2020年:66135件
2019年:64758件
2018年:62607件
4.考察
上記結果からわかるように2019年、2018年と比較して今年の1月~5月の補充欧州調査報告(Supplementary European Search Report)、審査段階における第1CommunicationおよびEPC規則71条(3)の発行数は減っていません。特に欧州特許庁の拠点があるオランダおよびドイツがロックダウンをしていた3月~5月の間も発行数は落ちていません。このことは欧州特許庁の審査官はコロナ禍中も例年と同程度の仕事量をこなしていたことを示唆します。つまりコロナ禍は欧州特許庁の審査の生産性に影響を与えなかったと言えます。
欧州特許庁ではコロナ禍前からもともと多くの審査官が在宅勤務をしていました。このためロックダウンによる影響をそれほど受けなかったことが生産性が低下しなかった一因と考えられます。
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